連載
□May my feeling reach you. -私を想って-
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「さァ、終わりにしようぜ…お前たちも……この腐った世界もなァ……」
──ここに来たのが…間違いだった……
気付いた時はもう…遅かった。
次の瞬間には、ぱんっと乾いた銃声が空に響いていた。
私のせいで…どんどんどんどん周りの人が倒れていく…
その状況を目の当たりにして、もうどうすればいいのか分からない…すると、No nameの脳裏にある男が浮かんだ。助けてと叫びたくても、叫ぶ気力すらNo nameにはもう残されていなかった。
─でもこの状況を打破できるとしたら、もう……
No nameは思い浮かべた銀髪のその男の名前を呼んだ。
「……助けて、銀さん…」
*
「……?」
銀時は無意識に格子窓のほうへ振り返った。
…誰かが呼んだ気がしたのだ。
「どうしたんですか、銀さん」
そんな銀時の様子を不審に思ったのか、新八は銀時に声をかけた。
「…なんでもねェよ」
「…ならいいですけど」
「そんなことより!No nameはどこ行ったアルか?今日まだ姿見てないアル!」
「そういえば……風邪でも引いたんでしょうかね」
「……」
「マジでか!No nameにしては珍しいアル」
「……」
「でも神楽ちゃん、本当に風邪かどうかは分かんないよ。あくまでも僕の推測」
「いやいや…風邪アルよ」
「なんで決めつけてんの!わかんねぇつってんだろーが!」
「……」
「……」
「……」
しばらく沈黙が続き、新八は違和感があることに気付いた。こういう話題になると必ず発言する人物が先ほどより自分から言葉を発してはいないのだ。
「…ちょっと銀さん?どうしたんですか、さっきからだんまりじゃないですか…調子狂っちゃうなぁ、もう」
新八の発言を受けて神楽は銀時を一瞥して続けた。
「野暮なこと聞くもんじゃないアルよー、新八。No nameのこと考えてたに決まってるアル」
「…あ、なるほどね」
「うるせーよ、ガキは黙ってろ」
「…やっぱりね」
銀時のその反応を見て新八は合致したように神楽と顔を見合わせ頷いて笑いながら言った。
「……」
─なぜだろう。
なぜだかわからないが銀時は妙な不信感を抱いていた。
…いやな予感がするといってもよい。
なんで…こういうときに限ってここにいねェんだ……あいつは。
銀時の脳裏にNo nameの笑顔が浮かんだ。
─まさか何かあったんじゃねェだろうな?
そんな銀時の心の不安を助長するかのように突然置いてあった固定電話が鳴り響く。
一番近くにいた新八が受話器を取った。
「はい、万時屋です…………え、大江戸病院?」
普段聞きなれない単語に神楽も、そして銀時も思わず新八の方を凝視してしまう。
「…あの、何かの間違いじゃ……え?えぇ、確かにNo nameNo nameさんは知ってますけど……」
No nameの名前を聞いた瞬間、銀時は思わず立ち上がり、新八から受話器をひったくっていた。
「…あ!ちょっと、銀さんっ!?」
「あ、すいません。電話かわりました…No nameがどうかしたんですか?」
『今朝方に血だらけで倒れてるのを発見されたので当院に運び込まれました』
「血だらけ…っ!?」
『お、落ち着いてください!No nameさんがケガをされているわけではありません!調査の結果、No nameさんの血液型とは違う血液の反応が出たので……ちなみにNo nameさんは軽傷です』
「…」
『なんせ、身元を証明するものがなかったので…どなたに連絡していいかわからなかったもので…お知り合いなら当院までいらっしゃってください』
「……はい、わかりました……」
『では…』
医師と思われる男の事務的な口調で告げられた電話の内容を、銀時はぱっと理解することができなかった。
しかし、気付いた時には着物の羽織を手に取っていた。
「えっ!?ちょっと…!銀さん!どこ行くんですかっ!?僕たち状況なにもわかってないんですけど!」
「そうアル!ちゃんと説明するアル!」
「…うっせェよ!俺だって何がどうなってんのかわからねぇんだ…けど…No nameが…あいつが大江戸病院に運び込まれたらしい」
「…なッ」
「…とにかく、俺は病院行ってくらァ。…お前ら留守番頼むぞ」
「何言ってるアルか!私たちも行くアル!」
「そうですよ!そんな事情聞かされて黙って待ってられるわけないでしょう!」
「……勝手にしろ」
*
案内された病室に到着すると銀時が真っ先に扉を開けた。
「No nameっ!」
「ほら…No nameさん。来ましたよ」
医師に肩を掴まれ、下を向いていたNo nameが顔をあげた。
その様子を見て新八は安どのため息をついた。
「なぁんだ、大丈夫そうじゃないですか…」
「本当アル!まったく!人騒がせな!」
「…」
No nameは答えずに不思議そうに二人の顔を見つめている。
しかし銀時はそんなNo nameの態度を不審に思い、No nameの視線に自分の視線を合わせてNo nameの名前を呼んだ。
「おい…No name……」
「……」
No nameは神楽と新八から銀時の方へ視線を変えた。
「…大丈夫か?」
「…あなた……だれ……?」
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