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「……で、なんだって?」

「だぁーかぁーらぁー…私の友達が総悟のこと好きなんだってよ…?」


─あぁ…言いたくなかった。
それを言ってしまうということは必然的に総悟の答えも聞くことになる…。

「で、俺にどーしろって言うんでィ」

「は?どうしろもこうしろも……総悟の返事を…」

しかし総悟は相変わらず、仏頂面で聞いているのか聞いていないのかもよく分からないような表情をしている。

「ちょっと…!聞いてるのっ!?」


総悟の態度に若干いらついたNo nameは思わず、沖田の肩を掴んだ。


「聞いてまさァ…けど、そんな話俺には関係ないんでィ」

「関係ないって…!総悟のこと好きって言ってんのに、関係ないはないでしょ!?」

「だーってそーだろィ?…好きだの嫌いだの、そんな感情抱いてるくらいなら自分で言いに来いってんだ」

「……!」

「No nameにそれを代弁させようとした時点で俺の気持ちはすでにそいつとは真逆の方向いてまさァ」

「……意外としっかりした考え持ってたのね…びっくりしたよ」


と言いつつも心の中で総悟の答えに喜んでいる自分がいる。
……まだ、私も希望を持っていい?

No nameは目の前にいる幼馴染の男をじっと見つめた。

「…なんでィ」


No nameの視線に気づいたのか、総悟は視線をこちらに移して言った。

「…いや、なんでも…」

「……ふーん?…ま、納得したんならもういいだろィ?」

まるで出ていけと言わんばかりの口調である。そのことに疑問を感じたNo nameは総悟に問いかけた。

「…ねぇ」

「何でィ」

「総悟、なんか怒ってない…?」

「気のせいでさァ」

「…やっぱり怒ってる」

「気のせいだって言ってんだろィ」

そうは言いつつもやはり沖田の口調はそっけないものである。


「…ごめん」

「なんでNo nameが謝るんでィ」

「…謝りたくなったから」

「意味分かんねェ」


そう言いながらも総悟が突然、吹き出した。


「ちょっと!なんで笑うのよっ」

「一貫性のないバカは見てるだけでイジりたくなるんでィ」

「バカで悪かったわね、このドS王子ッ…もういいわよ!あーぁ、さっきまでのしんみりした空気が台無しっ」

「No nameのせいだろィ」

「…とにかく!総悟の気持ちは伝えとくから!じゃっ!」

急いで部屋から立ち去ろうとするNo nameの前に沖田が立ちはだかった。

「はい、ストップ」

「何よ…」

「その友達とやらに伝言頼みまさァ」

「伝言?」

「俺ァ、好きな女いるから無理だってねィ」

「はっ!?」

沖田の突然のカミングアウトにNo nameの思考回路が停止してしまった。


「…何でィ」

「総悟、好きな人いるの!?」

「いちゃ悪いんですかィ」

No nameの言葉に沖田が怪訝そうな表情をする。

「い…意外……」

「気になるって顔してますねェ」

「そ、そりゃー…幼馴染として?気にならないって言ったらウソになるし……」


そう言いながらも自分で視線が泳いでいるのが分かる。総悟の顔をまともに見ることができない。
そんなNo nameの様子を総悟はじっと見つめている。
そしてさっきまでの笑顔とは打って変わった真面目な表情をNo nameに向けて言った。

不覚にもNo nameはその表情に少しときめいてしまう。


「幼馴染としてっつーんなら一生教えてやんねェよ」

「…どういう意味?」

「ただの一人の女として真面目に俺の話を聞いてくだせェ」

「…え」

「俺の好きな女はねェ、昔っからバカでアホでさっきみたいに脈絡のない話を唐突に始めたりする…そりゃーもう典型的なバカなんでさァ。でもなんか気になってしょーがねェ…そんな存在なんでさァ」

「…!」

総悟の言葉にNo nameは胸が高鳴った。
No nameの言葉を待たず、総悟は続ける。

「そんな女がいきなり真面目な話持ってきたと思ったら友達が俺のこと好きだって?ふざけんのも大概にしろってんだァ」

「…総悟」

「これで機嫌悪くならねェやつはいねェだろィ…」

そういう総悟の視線は完全にNo nameの方へ向いてる。

「…理解してくれやすかィ?俺の気持ち。まァ、さっきからの流れでNo nameの気持ちがどういうもんなのかわかってるつもりですんで、返事はいりやせんけど?」

そういうと今度は優しい微笑みをNo nameに向けた。

「……反則」


(悔しいから)
(ん?)
(好きだ、なんて絶対に言ってやんない)
(そう言われると無理やりでも言わせたくなるのがS心ってやつでさァ)
(…え)
(冗談でさァ。ま、そういうとこも含めて好きってことで)
(………ずるい)



【おしまい】





((2012.01.26))
 

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