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─…なんか、絶対私の方が銀さんのこと好きだよなぁ……。

No nameは眼下で眠っている銀時を見てそう思った。
長年の片思いの末にようやく万事屋の一員から恋人関係になったというのに、No nameはその立場を満喫できているのか不安になっている。

私のツボド真ん中を突いてくるような甘い言葉や、絶妙なタイミングでのキス。
すべて銀時からNo nameへ向けたものであって、No nameから銀時に向けたことは一度もない。
そのことがどうにもNo nameの中では引っかかっていた。

─自分だけが一方的に銀時のことを想っているのではないか、と。

「確かめたいけど……そんなことする勇気もないしなぁ」

…というよりも、起きている銀時にはその隙がないのだ。

…ん?
“起きている”…?

その結論に達した時、No nameはもう一度寝ていた銀時を見た。

─じゃあ、寝ているときは、大丈夫なんじゃ……

No nameは唾を飲みこみ、気合を入れなおし、もう一度銀時の方を見つめた。


「…なんか、気分的にフェアじゃないけど……いいよね、彼女だもん……」

No nameは恐る恐る顔を近づけていく。
そして、No nameの唇が銀時の唇に重なるその寸前。


「…寝込み襲うってなんだよ」

銀時の唇が動いたのだ。
No nameは驚いて思わず、叫んでしまう。

「…ぎ、銀さん!?起きてるのっ!?」

「…今さっき起きた…で、No nameが何かしでかしそうだったんで様子窺ってたんだ」

「ずるい…!」

「ずるいのはお前だろーが!…何しようとしてたんだ?」

「…キス」

「はァ?なんで?」


銀時はNo nameの答えを聞いて意味が分からない、というような顔をする。

「…だって!…なんか、絶対あたしの方が好きだと思って!いっつも銀さんからキスするし…!たまには私からキスしてもいいでしょっ!?」

勢いに任せてNo nameはそう言ったものの。落ち着いてみると恥ずかしくなってしまい、顔が赤く染まる。
No nameのその言葉を聞いて銀時は呆れたようにため息をついた。

「…敢えて言うけどさ……」

「……?」

「お前、バカだろ」

「……はい…?」

想像していた言葉と真逆の言葉が銀時の口から飛び出してきたのでNo nameは呆気にとられてしまった。
しばらく二人の間に沈黙が流れたが、おもむろに銀時が口を開いた。

「…まァー、こんなバカな女に惚れた俺もバカってことかねー…」

「…何よ」

「…俺がNo nameのこと好きで好きでしょうがないってこと分かんない?そんなお前からキスなんてされた日にゃ…絶対歯止め聞かなくなるからねー銀さん。そりゃもう間違いなく」


うんうんと自分で納得したように銀時は頷きながら言った。

「…歯止めがきかなくなるって…どういう…」

「……なんなら試してやってもいいけど?」


銀時はNo nameの顔を両手で挟み、自分の視線と合わせて言った。

「…あ、あの……」

「ん?」

「そ、それは…心の準備というものが……だから、ちょっと待って!」

「…やだね、お前から仕掛けたのが悪かったな」


そういうと銀時は笑った。


(つーか、No nameが一方的に俺のこと好きだって?)
(だってそんな風にしか見えないもんっ)
(バーカ)
(…ま、まだ言うっ!?)
(俺のが好きだよ)


【おしまい】





((2012.01.07))
 

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