text

05
1ページ/1ページ

「……で、なんでそんなにずぶ濡れなんだ、お前は?」

頭から足まで雨でびしょびしょになったNo nameを見つめて土方は呆れたような声を出した。


「…あ…その、なんていうか……行く時は小雨だったから大丈夫かなと思って……」

No nameは乾いた笑いを発した。
それを聞いた途端に土方から怒号が飛んでくる。


「アホか、お前は!今日の天気予報見てなかったのか!っていうか傘持っててどーやったらそんなにずぶ濡れになるんだ!」

「すいません、すいません!突然突風が吹くなんて想像もしてなかったんですッッ!っていうか、屋根もないようなところでいきなりだったもんで……傘がご臨終しちゃったといいますか……」

「……要するにひっくり返って…んなザマになったわけか」

「そういうことです……」

「…まぁいい…。お前のドジ具合を差し引いても天候のせいにはかわりないもんな」

「副長…さりげなく毒ぶっ込まないでください…傷つきますから…っていうかドジ関係ないですよね。ほぼ100%雨のせいですよね…」

「……そのままの格好で風邪引いてもシャレにならんからなぁ…風呂入って着替えて来い」

「…はーい…」

*

土方に言われた通り、風呂に入り一息入れたNo nameは、予備の隊服に腕を通し気合いを入れなおした。

「よしっ!」

「…出たのか?」

しばらくしてNo nameが部屋に戻ると、土方が覗き込んできた。

「あ、副長!おかげさまで!No nameNo name、めちゃめちゃさっぱりして帰還しましたっ!」

No nameはニヒッと笑い、ご丁寧に敬礼付きで土方に向き直った。

「敬礼とかいらねーから」

「冗談ですよ、副長!」

「…。……ほら、これ飲めよ」


そういうと土方は左手に持っていたマグカップを差し出した。

「…?なんですか?これ」

「…誰かさんが雨に打たれて帰って来たんで、風邪ひかないようにわざわざ俺がコーヒーを淹れて差し上げたんだが?」

「わざわざ!?…副長がっ!?熱でも…」

あるんですか、と続けようとした時土方に痛烈な視線を向けられた。


「…斬られたいのか、お前は」

「…あ、ありがとうございます」

「それ飲んだら行くぞ」

「…え、行くってなんですか?っていうかどこに…!」

「お前、傘壊したんだろ?」

土方がNo nameの瞳をじっと見つめて言った。

「…あ、はい……」

「どーやって家まで帰るつもりだったんだよ」

「……あ」

土方に指摘されてNo nameは初めてそのことに気がついた。


「…考えてなかったのかよ」

また土方は呆れたようにため息をついた。

「なんつーか、お前ってやつは……期待を裏切らないつーか、バカだよな?」

「…地味に傷つくんで、あんまりバカって言わないでください。副長」

「…。ま、予想通りだったけどな」

「はい?」

「……だから、送ってってやるから。家まで」

「え?」

「え、じゃねーよ。不満か!この俺がわざわざ家まで送ってやるっていう申しつけが!」

「あ…いや…そういうわけじゃ…」

「だったら…さっさと行くぞ」

「あ、はいっ!」


そして、二人は雨の中歩きだした。


「土方副長」

「あァ?」

「副長って意外とおせっかいなんですね」


No nameのその発言に土方は動けなくなった。

「…バカでドジな上にさらに鈍感なのか、お前は………」

「どういう意味ですか?」

「…あーもういい…お前にゃ一生言ってやらん!」


諦めたように少し怒りながら土方が言った。


(副長)
(あァ?)
(顔赤いんですけど)
(…気のせいだ)


【おしまい】





((2011.12.30))

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ