プチ連載
□恩知らずで終わり、恩返しから始まる
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「いやほんと助かったぜ。ありがとよォ!」
心配のあまりあの人の幻覚さえ見えてきた。
「オイ、聞いてんのかよー」
何でこんなにもあの人を心配しなくてはいけないんだと、自分自身にも聞きたいくらいだ。
「オイって!」
「……!」
なんて自分の心中に問い掛けていると、あの人の幻覚は怒鳴り声をあげて催促してきた。
本当によく出来た幻覚だ。
その怒鳴り声こそ、出会ったあの人そのものだと言い切れるくらいに威勢がある。
「何だァその、まるで幻覚でも見てるような面は!」
本当によく出来てる。と思いながらあの人を見ていれば、ゲハゲハ笑われた。
相変わらず憎らしい笑い方も、あの人そのものだ。
「オイ何一緒になって笑ってんだお前はよ!」
「っいた!」
出来が良すぎて笑えた。その途端、コツンとあの人の幻覚に小突かれた。
「え?………ええええ!」
そこでようやくライナは、気がついた。
出来が良いも悪いも何も、これは幻覚じゃない。
いかにもこれは、あの人そのものだということに。