プチ連載
□そんな恩返しはいらない
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忍びやら暁やら何やらに溢れかえる、このご時世。
何が起こっても何ら身の保証は無いわけだ。
「今日も平和ですね」
つまり平和が続くとは限らない訳、だが。
「オイオイ今日で何日目の用心棒だァ?これじゃただの居候に格下げになってんじゃねーかよ!」
続くとは限らない平和は、どこまでも続いていたのだった。
「確かに今のあなたはただの居候と言っても過言ではありませんね!むしろただの居候です!けど…」
何も起こらないに越した事は無い訳、だが。
「ただの居候じゃ意味ねーだろうがよクソ!」
この人は何かが起こらないと、気が済まないらしい。
何かさえ起これば守ってやると安心出来る大口を叩いておいて、しっかりと丸腰なのが不安だ
「あなたもよく何も持たずに用心棒を勤めてますね」
「あァ?何だって?」
何も持たずとも勤まるこの平和一色の状況で、それを言うのはおかしな話だ
なんて顔をするあの人。
「どこ見て言ってんだァ?持ってるに決まってんじゃねーかよ」
と思ったが、この平和一色の状況でも準備万端だと言いたい顔だったらしい。
「ほらよ、ちゃんと持ってんだろ」
「おお…!って危ないじゃないですか!何持ってんですか!」
「はァ?そりゃお前、用心棒が丸腰でどうすんだって」
丸腰でも心配は無いと付け足しながらも、しっかりと片手で鎌みたいなものを掲げるあの人。
いつの間に持っていたんだ。と言いたいところではあるが、よく見ればその鎌に見覚えがある
「あ、あの時…ですか!その鎌!」
「あーよく分かったなァ、あん時に持って来たんだぜ。準備良いだろ」
それはこの人が帰ろうとした日のこと。
帰ろうとするこの人ばかりに気が奪われていて、気が付かなかった。
あの出会いの場所から、鎌を拾っていたあの人の姿に。