プチ連載
□お帰りなさい
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「いつの間にか朝じゃねーか」
と、起きたあの人だが時刻が真昼なのを知らない。
「おはようございます。でも、もうお昼ですよ。」
「あー昼か、通りで腹が減ったと思ったわけだぜ」
「起きたそばからそれですか」
この人が家に再来して2日目の朝。いや、昼。
相変わらず朝に起きてくれないものだから結局は昼になっている。
「ご飯、もう少し待ってくださいね。今から買い出しに行きますから」
「お前、一人暮らしのくせして持ち合わせねーのかよ」
誰のせいだ。
「二人に増えたから無いんです!」
全く誰のせいだと思ってるのか。依然、この人が眠っている間に買い出しへ出掛けたら「夜逃げかよ!探したじゃねーか!」と大騒ぎした挙げくの果てには勝手に家から出ていったくせに。
だから、あなたが起きる昼まで待ってあげたのに。
「いいですか、あなたのせいなんですよ。だから大人しく買い出しから帰ってくるまで待っていてくださいね」
「ったく、わかったって」
全くわかってない。
「それじゃ、いってきますから……大人しく待っていてくださいね」
大事なことなので二回。
どうか、留守中にあの人が恩を仇で返すような真似だけはしませんように。
………不安だ。
「なんでこっちがハラハラしなくちゃならないの…」
それは依然、あの人に留守を任せて買い出しへ出向いたときのこと。不法侵入した忍びをあの人は殺そうとしたからだ。
それがあの人なりの恩返しだという。
恩返しになるわけがないのに。
「あの人、大丈夫かな。はやく買い物して帰らなきゃ…」
それが恩返しになると思っていたなら、あの人のためにもならない。
だからこそそんな恩返しはいらない。 そう言って、追い出したはずだった。
あれから数ヶ月流れたことだろう。
「ただいま戻りました」
「おー早かったじゃねぇか。そんで買えたのかァ?」
「今日はスムーズに買い出しが出来たので大丈夫です」
流れて数ヶ月。
そして今みたいに買い出しへ出向いたときのこと。
偶然にも「暁が戦争を起こす」と、街中が騒いでいたのを私は耳にした。
あの人、大丈夫かな…
なんて思っていたとき、あの人はひょっこりと現れて今に至る