プチ連載
□クソみたいに平和な日
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そろそろ起きてください、ご飯出来ましたよ。
と言ったら、危機感を察知したくらいの勢いであの人は飛び起きてくれた。
「あの飛段さん。その前に少しだけ真剣な話、聞いて欲しいんですけど……ご飯は後に」
「耳だけ空いてりゃいいだろーちゃんと聞いてやるから大丈夫だって」
「…………………。分かりました、続けます」
で、真剣な顔して何言い出すかと思ったらこれがまたとんでもない事だった。
「あの…あなたから私はどう見えていますか?」
「―――!?」
食卓は決まって腹八分目だ。
つまり、餓死寸前くらいの非常時にでもならない限りは満腹を得られない質素な食事である。
その貴重な食料を、喉の奥で盛大に詰まらせた。
「水…!飛段さん、お水!」
その先は水が一気に流れ込み、貴重な食料は呆気なく胃に消化された。
「何言い出すかと思えばそれはねェーだろ…」
「え?普通に聞いただけなんですけど」
「どう見えるってよ…」
これを普通に聞くやつがどこに居る。
と思ったらここに居た。
「そりゃお前は……馬鹿みてーにお人好しで警戒心っていうもんも知らねーし、見てらんねーよな」
一言で言うと、お前は弱い人間だってこと。悪びれもなくサラリとこの人は言い切った。
「そうですね、飛段さんの言うとおり私は弱い人間です…」
「だからさ、お前みてーなやつはよ…」
「私は弱い人間なので、世間体しか考えてませんでした。」
言ってる意味が分からないまま「ごめんなさい」と謝られたって、意味が全く分からない。
「あのよ、何で謝られてんのか分かんねーんだけど…お前何か悪いことでも言ってんのか?」
「いえ、でも私は以前、あなたが悪いと一方的に責めたことがありましたよね。」
「あー…で、それが何で今ここに出てくんだよ」
思い当たる節は、いつかのあの日の出来事だけだった。