プチ連載
□不死身と不思議
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「角都も居ねぇしあいつも居ねぇし…腹立つぜほんと」
ピリピリして腹もぐーぐー鳴ってる。おかげでもう何日か、何も食べてない。
さっさとアジトに帰りゃいいだけのことなのに足はあてもなくふらついていた。どうせ誰も待ってやしない。
だから帰る気でねぇんだよ
暁の衣なんか堂々と着て、ふらふら歩いてても誰一人迎えに来ない。ばかみてぇな連中だろ。
「あいつは…探しに来たのによ」
結構付き合いは長かった。確かにあの中じゃ一番、日は浅かったかもしれない。でも何年一緒に居たんだってハナシ。
それがどうしてたった数日一緒に居たくらいのヤツに負けてんだ。
「あーくそ帰る気でねぇ」
一緒に帰りましょうよ。
「あいつならそう言ってくれっかな」
もう探しに来るはずもないのにどこかでそんなことを期待してたのかもしれない。とにかく、この足はアジトに帰ることを望んではいないらしい。
だから、帰るときは良い気分になりてーって言ったのにこれか。
「そんな恩返しはいらねーってよ。何か間違ったかよ」
はじめはそんなことで腹が立った。
いらねーならもう出てってやるって言わなくてもあいつはそれを望んだ。
わけわかんねぇ。
勝手に家ン中入ってきた忍びを放っておいてよかったのかよ。良いわけないから用心棒なんだろ。
何が違うか、わけわかんねぇ。
はじめはそんなことに腹が立って家を飛び出した。
恩返しでもして気分あげて帰る予定はだいぶ狂ってる。これじゃ、最悪だ。
そう言ってもどのみちアジトには帰る予定でいたわけで…家を飛び出しても、あてはあった。
なのにあれから数日、とにかく足は不安定にふらついていた。どこに向かってるかも知らない。
時に暁だと分かりやすい衣のおかげで通りすがる連中に見つかることもあった。
「お前…暁だな!」
あーくそ、またかよ……
サッサとアジトに帰らないせいでそれを繰り返しては今にある。
「わりーけど今そんな気分じゃねーんだよなァ…またにしよーぜ」
「待て…!暁だ!暁を追え!」
鎌を握るとあいつが脳裏によぎる。
それで戦うのが怖いってわけじゃなく、単純に嫌になるわけだ。