プチ連載

□やっぱり必要だ
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そんな日々が流れに流れ、ライナの耳にあの言葉がようやく止まった。


「あ、暁……」


それは忘れるはずもない。あの人がどういう性かと思い知った、あの言葉だ。

忍びやら暁やら何やらで溢れかえるこのご時世。
その忍びやらと暁やらが全面戦争をするという事を、ライナは耳にした。


「あ、あのっ…それ、本当なんですか…!」


不謹慎な大声は、お店の中を響きわたった。それに一驚したのか、ライナへと視線が集まる。

いや、一驚したのはそこではなかった。
周りの客人が自分を見る目というものは「そんな事も知らないのか」と言っている目だ。



「あ、ごめんなさい…大声出して」

ここがお店の中だなんて忘れるくらい、買い物というのは久しぶりだった。あの人が居なくなってからというもの、その必要も無くなっていたのだから。
それ故にライナは、変わりゆくこのご時世を知らずにいた。

「そんな事も知らないのか」なんて言っていた目は、どうやら本物だ。
「そんな事も知らない」なんて言う顔をするライナに、周りの客人は口にした。

「本当だ」と。


「あの人、も……?」

暁は怖い、そう思っていた自分が居たはずなのに今の今となってはそんな自分が嘘のようだ。


「大丈夫、かな…あの人」

そこには怖いはずの暁であるあの人を、心配する自分が居た。

まるであの日の自分が嘘みたいだ。けれども、本当だ。
それを証拠にざわざわと騒ぎ出す胸が、落ち着く事はなかった



 
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