プチ連載
□無いはずの居場所
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死んでいた、はずだった。そう思うと帰る場所なんてものは始めから無かったのかもしれない
ピタリと止まる足元、そこには死を垣間見たあの穴の姿が今もなお残されていた。
「仕方ねーよなァ、もう」
死んでいたはずだった、だからこそもう帰る場所なんてものは無い。
居場所を失った足がそう言っていたのかもしれない。
「仕方なくないです!」
「…!」
「恩返しはどうしたんですか!これじゃあ恩知らずですよ!恩知らず!」
そう言っているようにも聞こえた足が、違うと言っているかのように振り返る。
どういうわけか、後ろに居たあいつのせいで。
「な、何でお前!んなとこに居んだよ!」
「それはこっちの台詞です!探したじゃないですか!と言っても探す場所なんてここしか無かったんですけど」
「探すってお前……方向音痴じゃなかったのかよ」
「方向音痴だからこそ探し回りましたよもう!」
そこに居たあいつはこの有様だ
探し回ったせいでいつかの自分みたいに、ご立腹している。
そう思ったけれど、どうやら違うらしい。
「勝手に居なくならないで下さい…心配するじゃないですかもう!」
こいつは、勝手に居なくなった事にご立腹していた。