プチ連載
□生かしてくれた恩じゃなく、生きた恩
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恩返しなんて性に合わない。適当にやって、適当に終わらしてやれば済むものだ
それが、こいつでなければ。
「ま、待ってて下さい…!いま何か持ってきますから…!」
ぼんやり見上げると、確かに人の姿が見えた
場所が場所だけに視野が狭いからか、そいつの顔はハッキリと見えない。
そう考えたけれど違う。
自分の意識が朦朧としてるからだ。
と、すぐにその考えは訂正した
朦朧とする中でも、ダッと乱暴に地を蹴る足音だけはハッキリと聞こえる。
もう戻ってこないだろうな、なんて捻くれた事を考えたのが最後だった。
「遅れました…!い、生きてますか!」
そして、
「まさか戻ってきたのか」なんて考えたのが、遂に消えていった意識から奇跡的に目覚めた最初に思った事。
「あー……一応、な」
不死身な自分が言うにはおかしな言葉だ。
そう思うと、見境なく助けるような真似するこいつなんかよりも自分に笑えてきた。
「というかよく生きてますね!あ、待って下さいね…!今そちらに行きますから。話しはそれからです」
何の話があるんだ。
あくまで初対面なこの時、話す事は何一つ無かったはずだ
けれど話があるんだと言わんばかりに、バラバラ死体と同様の姿と変わり果てた俺の所まで何の恐れもなく降りてくるそいつ。
話があるというならば「ありがとう」の一つくらいしか無いだろう。