プチ連載
□勝手な恩返し
2ページ/4ページ
「ひ、一月、ですか……!」
「いや正確には分かんねーよ。何しろあの穴ん中にずっと居たからよォ」
時間の感覚が無いという事依然に、もっと大切な感覚が無くなりそうだ。
生きてる感覚とか、生きてる感覚とか生きてる感覚とか。
「……よく生きてましたね」
「だから言ったろ。不死身なんだって、元はな!」
それでも餓死寸前だったからか「元は」と付け足すこの人。
栄養さえ与えれば永久に不死身らしい。 残酷な体だ。
「あの、どうしてあなた」
そんな体が何であんな目に合っていたのか少しだけ、興味にとらわれる。
「………の名前、聞くの忘れていました」
けれど聞いてはいけない気がして、話をそらした。
「あーそういやそうだったな」
その人としても過去は過去の事で割り切りたいのか、他には一切触れずに短く名前だけを口にした。
「で、お前は?」
「あ…………ええと、ライナです」
「そうか、ライナか!」
うんうんと頷くこの人。
あくまで馴染みはなく、この人との関係性は日も短いものだ
「改めて礼を言うぜ、ライナ」
けれど
相手は大きな借りがあり、ライナには大きな恩がある。
どうやら、何かが長くなりそうな関係性だ。