他人の夢
□寝込み襲撃注意
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太陽の照りつける暑い夏の下、今日も氷帝学園中等部男子テニス部では厳しい練習が行われていた。
しかしその影で一人、いつもの如く眠りふける者が。
「芥川さん、芥川さん起きてください」
「むにゃむにゃ……んーポッキー……」
「……はぁ」
適度にクーラーのきいた部屋のソファーで眠りに付くのは、3年芥川慈郎。
ソファーの背もたれに寄りかかりイビキをかく彼は、いくら声をかけても起きる気配はない。
「……」
ちょこんと芽生えるのは、悪戯心。
「芥川さーん……」
小さな声で呼びかけながら白い頬を指でつつくとふにっと沈む。それを何度か繰り返し、今度はフワッとした金の髪に指をかけた。
「…よく寝てますね、あんた」
指に髪が絡まるくすぐったい感触を堪能し、その頭を撫でる。
「ん〜……わかしぃ……ぐぅ」
「!」
少しばかり身動ぎをした彼は、普段はめったに呼ばない俺の名前を呼んだ。
うっすらと微笑を浮かべる寝顔に堪らなくなり、つい頭を抱え込むように抱きついた。
「…どんな夢、見てるんです…?」
起きてる時じゃ恥ずかしくてこんな事出来ないから。
貴方が眠っている間にしか貴方を求められない、こんな不器用な俺を、どうか許して。
こんな事を貴方に話たら貴方は笑うかな、それとも微笑みながら俺を抱きしめてくれるだろうか。
どちらにしろ、貴方はきっと俺に『好きだよ』と言うのだろう。
ほんのり香る甘い香りは彼がよく食べているムースポッキーの香り。その香りをもう少し強く感じたくて、思わず首元に顔をうずめた。
寝込み襲撃注意
(あー!日吉がジローに抱きついてんぞ!)
(…っ!)
(へぇ……寝込み襲うなんてなかなかやるやん日吉)
(なっ……ち、違います!!)