歌い手

□おにぎりタベレンゼ
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腹を空かして 飯ごうぶら下げて
しかめっ面で ひとり、ため息を吐いた
食べかけのそれ おにぎりかじって上を向く
「嘘つきコシヒカリ 新米じゃない」


お米売り上げ 賭博負けて消えて
「嘘つき五穀米 売れない手取りはちっぽけね」
どこに植えるの? 売れないブランドを付けたまま
北に行こうか? それだけで売れそう


米を洗って 洗米手洗い無我夢中
流し詰まるわ 灰色の玄米で
もしもあたしが 自由に沸かせるジャーならば
ジャーの底から 冷たいお水を滾らせる!


塩ゴマつけて そっと米を冷やせ
軽く握った まだ熱を帯びてるの?
誰が言ったの? 「熱くて握られない」なんて
誰に言ったの? その手濡らさずに


米を炊かずに 湯汁をこぼして何回目?
容器焼きつく 遠い石釜の中
弱い炭火が 崩れて目を向けた瞬間に
手を伸ばしたけれど 届かない 


ひとり 冷たい、光届かないキッチンで
米を洗って 上手に炊けたならば
何を入れるの? タラコも梅干も腐りかけ
何もしないの? 両手に力を込めたまま


手を滑らせて 飯抜き腹ペコ無我夢中
ゴミが取れない 灰色の握り飯
このまま悪に ココロもカラダも許そうか
ひらり、こそりと、見知らぬ誰かの飯を食う


 

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