小説
□鎮魂歌
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『鎮魂歌』(レクイエム)は、私達の世界では死者を弔う歌である。
しかし、とある別の世界では全く別の物に使われているのである。
鎮魂歌は―魂に安らぎを与える謡。
―魂を揺さぶる謡。
―魂を自由に変える謡。
その世界では・・・『レクイエム』と呼ばれる人々が、この『謡』の歌い手として生きていた。
病気を治す薬の代わり、敵を倒す刃の代わり、
安らぎを与えるための謡、相手を傷つけるための謡。
色々な歌を知るその人々は・・・恐れられ小さな山奥に生きるのみとなった。
そのうちに、強い武力をもった王が現れ、その世界も「国」が出来た。
その名もcanary王朝。月を聖なるものと崇め、縁起を重んじる国風である。
良き色は月の『金・銀・黄』悪き色は闇の『黒・灰』
王族は名前に『月』を持ち、国を立派に治めていった。
現在17代国王、月影聖(つきかげひじり)が治めるcanary王朝でも『レクイエム』は、生きていた。
人知れず、道に溶け込んで。
そのレクイエムの村に、すばらしい才能を持った少女が現れ、独り立ちし、道に溶け込んだ。
少女の目的は『世界を治すこと』。
不思議な少女を、町の者は不気味がり、その謡に驚き、彼女をこう呼んだ。
『黒の歌姫』、と。