++ 夢現 ++

□+ eventh heaven +
1ページ/3ページ

今から1週間前。
私と零一さんは家族や友人達に祝福され結婚した。


零一さんとの生活にはまだ慣れていなくて毎日が緊張の連続だけど、これからは毎日一緒なんだって思うと幸せで胸が一杯になる。
朝起きると、当たり前の事だけど隣には零一さんが寝てる。
もう1週間経つのに、毎朝ドキッとする。


隣で眠っている零一さんを起こさないように、そっと起きてキッチンへ向かう。
高校時代に聞いた零一さんの毎日の食生活。
確かに、1日の栄養分は摂取できるのかもしれない。
でも、あんなの絶対に良くない。
だから私は、結婚したら毎日3食ちゃんとした食事を食べさせるって決めていた。
色んな料理本を見たり、お母さんに聞いたりして、栄養のバランスの良い物を考えて作ってる。
ちょっと失敗した物も、零一さんは残さずに食べてくれる。
そんな零一さんの私への気遣いが嬉しい。
だから、もっともっと上手くならなくちゃ。


朝食の準備が整い、お弁当も作り終わった頃。
零一さんが寝室から出てくる。


「おはよう、真由」
「おはようございます」


朝食を済ませて私は後片付けをして、零一さんは登校の支度をしてる。
後片付けが終わった頃には、零一さんの支度もほぼ完了。
零一さんは椅子に座り、今日やるのだろうと思わしきテスト用紙に目を落としていた。


「小テストですか?」
「ん?ああ。こうして定期的にやらなければ弛むからな」
「本当に、零一さんは生徒思いですよね。いつも気にかけてて。ちょっぴり羨ましいな・・・なんて」
「何を言っているんだ君は・・・生徒が誤った道に進まないように導くのが・・・」
「教師の務め、ですよね。わかってます。言ってみただけです」
「いや・・・まあ、そういう事だ・・・コホン・・・生徒を思う気持ちと、真由を想う気持ちは別物だ。つまり・・・真由がそんな事で不安になる必要は無い・・・以上」
「ふふ。不安になんかなってないですよ。私、零一さんの事信じてますから」
「そ、そうか・・・コホン・・・真由。ネクタイを頼む」
「はい」


零一さんからネクタイを受け取り、椅子に座ったままの零一さんの首に回す。
毎朝、零一さんのネクタイを締めるのが私の役目。
はじめ、ネクタイの締め方なんて知らなかったけど、零一さんが教えてくれた。
旦那様のネクタイを締めるのって、密かに憧れてたから。
だから、こうして締めてあげることが出来て嬉しい。


「では、いってくる」
「はい。いってらっしゃい」


零一さんを送り出し、掃除洗濯を始める。
零一さんは散らかすタイプの人じゃないから、そんなに時間がかからずに終わる。
洗濯物も、2人分だからそんなに多く無いし。


洗濯も干し終え、次は書斎の掃除。
掃除機を片手に書斎のドアを開けた。
その時、リビングに置いてある電話が鳴った。


「はい、氷室です」
『真由か?俺だ』
「あ、零一さん?どうしたんですか?」
『書斎の机の上に本が置いてあるんだが』
「本ですか?」
『ああ。急遽必要になった。悪いが届けてもらえないか?』
「別に構いませんけど・・・至急ですか?」
『いや。午後から使うから、昼までに持ってきてくれればいい』
「お昼までにですね。わかりました」
『手間をかけてすまないな』
「いいえ。それじゃあ、掃除が済んでから届けに行きますね」
『ああ。頼む』


受話器を置き、大急ぎで書斎の掃除に取り掛かった。



戸締りをして、学園へと向かう。
今からなら歩きでもお昼には間に合うよね。


「はばたき学園かぁ。行くのって何年ぶりだろ」


零一さんは、特に何も変わってないって言ってたけど。
あ、でも。
あの教会は、今では完全閉鎖になったとか言ってたっけ。
私の在学中も立ち入り禁止ではあったけど。
あんなに綺麗なステンドグラスがあるのに。
誰も見る事が無いのって、なんだか勿体無い。
それに。
あの教会は思い出の場所だし。
ずっと残してくれるといいのにな。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ