本=♀化

□陽の下
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「なんでだ……」

長太郎と暮らし始めてから早一週間。
掃除も洗濯も、ちゃんと出来るようになった。
だけど……
だけど料理だけがっ……

「なんでこうなる」

どんなに練習しても、黒い塊にしかならない。
滝に教えてもらった手順で作っているのに。

いや、見た目が悪いだけで、味は意外といけるかもしれない!

そんな根も葉もない自信で、料理とは思えない物体を口に押し込む。

「んぐっ」

吐き出したいのを抑え、無理矢理飲み込む。

「ゴホッ、食えたもんじゃねえぞ、コレ」

不味いの一言じゃ表しきれねぇ。
残りは……侑士にでもあげればいいか。
勿体ねぇし。

「ごめんくださーい」

思い立ったが吉日。
早速持って行こうとしたとき、誰かが訪ねてきた。

「はいはい」

戸を開けた先には滝が立っていた。

「こんにちは。今日の料理の出来はどう?……て聞くまでもなかったね」

滝は俺の持っていた皿を見て、苦笑を漏らす。

「なんとなく予想してたよ」

「うぅ…………滝ぃ、何が悪くてこうなるのか、全然分かんねぇ……」

「うーん、そうだなぁ」

滝は黒い塊を見つめた後、提案をしてくれた。

「夕食、作ってみてよ。僕が見てて、間違いがあったら言うから」

「すまねぇ、滝。ありがとう」

滝がお隣さんでほんと良かったと、心の底から思った。


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滝の教え方はとても分かりやすい。
俺の料理は分量が多過ぎたり、焼き過ぎたり……言ってしまえば、雑だった。
滝に指摘されたところをきちんと直し、作り上げた料理。
それは、ちゃんと食べ物に見えた。

「うん、いい出来だよ。味も文句なしに美味しいし」

「良かったぁ」

飯はいつも長太郎が作ってくれていた。
けど今日は、俺の料理を長太郎に出せる。
楽をさせられる。

「じゃあ、僕も夕食の準備するから帰るね」

「おう。本当にありがとう、滝」

「いえいえ。お邪魔しましたー」

滝を見送った俺は、長太郎の帰りを今か今かと待った。




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