本=他校
□惚気電話
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謙也さんの家に行く途中、頭を過ったのは鳳長太郎からの電話。
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「なんで俺が惚気を聞かなあかんねん」
『財前くんが一番話しやすいんだよ。先輩が恋人っていう、似たような境遇だし』
「いい迷惑や」
『そんなこと言わずに、お願いします』
「…………十分だけなら聞いたる」
『ありがとう!!宍戸さんがね、クリスマスのプレゼントに……
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「プレゼントは俺」』
を鳳にお願いしてきたやと!?
宍戸先輩は謙也さんと同じ、奥手や思うとったのに。
あ……違った。
謙也さんは奥手やない。
謙也さんは……
「光、いらっしゃ「ヘタレ」
「えっ」
「あ……」
「ヘタレて……ヘタレ……」
部屋に入れてもらった俺は、膝を抱えている謙也さんの背中をさする。
「本当のことなんすから、落ち込まんといてください」
「本当のことってなんや。俺はヘタレやない!」
涙目で否定してくる。
本気で言ってるんやろうか。
手も繋げない。
好きも言えない。
何もできんやん。
そもそも、家で話したり遊ぶだけって、付き合ってるって言えるん?
……って、何不安がってるんや!
「どうした?」
ずっと黙っていた俺を、謙也さんが心配そうに伺ってくる。
「……なんで触ってくれへんねん」
「何でもないです」そう言おうとしたのに、発せられたのは違う言葉だった。
「ひ、光?」
謙也さんとの距離を縮めようとする俺は、後退る謙也さんを壁まで追いつめた。
そして、逃げられないように、謙也さんの膝の上に座る。
「なんで好きって言わへんねん」
「と、突然何言うてんねん」
「…………不安なんすわ」
女々しいやろか?
そう思いながら、話し続ける。
「一緒にいるだけで幸せやし、言葉がのうても気持ちはわかります」
でも……
「それでも、謙也さんに触って欲しい……謙也さんが俺を好きやっていう実感が欲しいんすわ」
時計の針とお互いの呼吸の音。
その音以外、何も聞こえなくなった部屋。
そこに、謙也さんの声が優しく響いた。
「光」
手が俺の腰に回され、引き寄せられる。
そして、謙也さんは俺の耳元でささやいた。
「す、好きやで」
「…………目、見て言ってください」
体を離し、顔を真っ赤にした謙也さんを見た。
謙也さんは口をパクパクさせたり、目を慌ただしく動かす。