本=他校

□惚気電話
1ページ/2ページ



謙也さんの家に行く途中、頭を過ったのは鳳長太郎からの電話。


----------------


「なんで俺が惚気を聞かなあかんねん」

『財前くんが一番話しやすいんだよ。先輩が恋人っていう、似たような境遇だし』

「いい迷惑や」

『そんなこと言わずに、お願いします』

「…………十分だけなら聞いたる」

『ありがとう!!宍戸さんがね、クリスマスのプレゼントに……

----------------


「プレゼントは俺」』
を鳳にお願いしてきたやと!?
宍戸先輩は謙也さんと同じ、奥手や思うとったのに。

あ……違った。
謙也さんは奥手やない。

謙也さんは……

「光、いらっしゃ「ヘタレ」

「えっ」

「あ……」







「ヘタレて……ヘタレ……」

部屋に入れてもらった俺は、膝を抱えている謙也さんの背中をさする。

「本当のことなんすから、落ち込まんといてください」

「本当のことってなんや。俺はヘタレやない!」

涙目で否定してくる。
本気で言ってるんやろうか。
手も繋げない。
好きも言えない。
何もできんやん。
そもそも、家で話したり遊ぶだけって、付き合ってるって言えるん?

……って、何不安がってるんや!

「どうした?」

ずっと黙っていた俺を、謙也さんが心配そうに伺ってくる。

「……なんで触ってくれへんねん」

「何でもないです」そう言おうとしたのに、発せられたのは違う言葉だった。

「ひ、光?」

謙也さんとの距離を縮めようとする俺は、後退る謙也さんを壁まで追いつめた。
そして、逃げられないように、謙也さんの膝の上に座る。

「なんで好きって言わへんねん」

「と、突然何言うてんねん」

「…………不安なんすわ」

女々しいやろか?
そう思いながら、話し続ける。

「一緒にいるだけで幸せやし、言葉がのうても気持ちはわかります」

でも……

「それでも、謙也さんに触って欲しい……謙也さんが俺を好きやっていう実感が欲しいんすわ」


時計の針とお互いの呼吸の音。
その音以外、何も聞こえなくなった部屋。




そこに、謙也さんの声が優しく響いた。

「光」

手が俺の腰に回され、引き寄せられる。
そして、謙也さんは俺の耳元でささやいた。

「す、好きやで」

「…………目、見て言ってください」

体を離し、顔を真っ赤にした謙也さんを見た。
謙也さんは口をパクパクさせたり、目を慌ただしく動かす。




次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ