本=氷帝

□帰れない!
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忘れ物を取りに戻るんじゃなかった。

「すげー雨だな……しかも、この風じゃあ傘なんて役にたたねぇし」

宍戸さんが教室の窓から外を眺めて、「どうすっかな」と呟いた。

「すみません、宍戸さん。学校に立往生させてしまうなんて……」

これから台風がくる。
だから早く下校させようという学校の判断で、いつもより早く帰された。
俺も宍戸さんと下校したのだが、学校へ戻ることになった。
原因は言わずもがな、俺の忘れ物。
俺は付き合ってくれた宍戸さんに申し訳なくて、頭を下げる。

「俺が勝手に着いてきたんだ、気にすんな」

そう宍戸さんが言ってくれた。

「幸い、先生も残ってるみたいだし、落ち着くまでここに居ようぜ?」

「そうですね」

宍戸さんが近くの椅子に腰をおろした。
俺もその後ろに座る。
まだ五時過ぎだというのに、外はとても暗い。
校舎も職員室とこの教室以外真っ暗だし、周りは雨の音で埋もれている。
だからだろう、雷の光りと音がとても目立つ。

「雷近いですね」

「そうだな……ここに落ちたりして」

宍戸さんの冗談混じりの言葉と、ほぼ同時にそれは起こった。

一瞬の光りと、腹に響くゴロゴロッという音。
暗くなった教室。



それは――停電。



「うわ、本当に落ちやがった」

頬杖をついていた宍戸さんは、信じられないと言うようにため息をついた。


そんな中、俺は気がついてしまった。


暗い部屋(教室だけど)に二人きりだと……

「最悪、なんも見えねぇ」

二人で出掛けたりはあった。
けど、こう部屋というか、そういうところで二人きりは初めてだ。

「長太郎、大丈夫か?」

ヤバイ、意識したら宍戸さんを見れない。

「長太郎?」

どうしよう……
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