本=氷帝

□初日の出
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『初日の出を見に行きませんか?』


冬休み前に長太郎からそう言われ、俺はすぐに「行く」と答えた。
年明けに長太郎と会える。
その嬉しさで当日は仮眠することもできなかった。

「そろそろか……」

長太郎が迎えに来る時間の少し前に、俺は外に出る。
でも、すでに長太郎が待っていた。

「あ、宍戸さん。明けましておめでとうございます」

「おめでとう。て、もう来てたのかよ」

「はい。待ちきれなくて……」

照れ笑いを浮かべる長太郎。
俺は嬉しさで緩んだ口元を、慌ててマフラーで隠す。

「少し遠いですけど、初日の出がよく見える場所があるんです。行きましょう、宍戸さん」

と、長太郎は手を差し出してきた。

「……?カイロならねぇよ」

「違いますよ」

長太郎は苦笑しながら、俺の左手をとった。

「手、繋いで行きましょう」

「は!?誰かに見られたらどうすんだ」

「こんな朝早く、誰も居ません」

「そうか……そうだな……じ、じゃあ」

俺は長太郎の手を握り返す。
すると、長太郎の手が指を絡ませてきた。
この繋ぎ方はあの有名な、こここ恋、恋人繋ぎとか言う…………

「ちょ、ちょうた」

「誰もいないときくらい、いいじゃないですか」

そう言うと、長太郎は俺の手を引いていく。
恥ずかしい……けど、すごく嬉しい。
まだ暗くて助かった。
今の俺の顔は、ありえないくらい赤くなってるはずだから。




それから俺たちは細い道を抜け、坂をひたすら登った。

「ここです」

「おお……」

今いる場所から見える町は、なんだか、良くできた大きな模型みたいに見えた。

「こんな場所があったんだな……」

「はい。俺も最近見つけたんです」

長太郎は持っていた肩掛け鞄の中から、大きめの毛布を取り出す。
そして毛布を羽織り、地面に腰を下ろすと俺に向かって手招きした。

「宍戸さんも座りましょうよ」

「お、おう」

俺は長太郎に近づき、横に座ろうとすると、

「宍戸さん、ここ」

長太郎は自分の膝の間を指差した。





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