二
□大好きな人
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「・・・名前先輩がいなくなって、一番辛かったのはきり丸なんです」
「ボクらも悲しかったけど・・・」
「きり丸とは違ってて」
この数日間を思い出す
見ていられないくらい、日に日にきり丸は弱っていった
朝から朝まで、倒れるまでバイトをして、寝るのは授業の合間
三日目から潮江先輩みたいな隈が出来て
食欲が無くなって
体重が落ちた
筋肉も
ランニングに付いていけなくなって
ついに医務室に運ばれた
「悲しいのに、辛いのに、それを隠そうとするんです」
土井先生が励ましてもダメ
新野先生が止めてもダメ
中在家先輩が笑ってもダメだった
最終的に食堂のおばちゃんがきり丸の食事に薬を混ぜて眠らせたけど・・・(薬を混ぜてる時のおばちゃんは苦しそうで、殆ど手の付けられてないランチを黙って棄てていた)
「隠そうとして笑ってるけど、ホントは一人ぽっちで泣いてるんです」
「・・・私たちじゃ、泣かせられないから」
それでもきり丸が、一度だけ弱音を吐いてくれた夜
夢を見るんだって言ってた。名前先輩が出て、自分を置いて行ってしまう夢。追い掛けても追い付かなくて、一人ぼっちになって目が覚める。だから眠るのが怖いよって
同室の私たちにだけ吐き出してくれた弱音、ホントにホントに嬉しかった(きり丸が泣けないから、私たちも泣かない。抱きしめ合った後くっついて寝たんだよね)
笑っても本当の笑顔じゃない、引きつってたきり丸。い組でさえも気を遣ってバイトの手伝いをしてたこれまでの数日間。ようやく、ようやくきり丸が笑ったんだ!
「ボクも名前先輩にいっぱいぎゅーってしてもらいたいです。だけど」
名前先輩は絶対気付いてるよね・・・全部
勘、だけどさ
「「二人が嬉しそうなのが嬉しいんです!」」
今はどうかそのままでいて下さい
ちょっとの間くらい、現実から目を背けてもバチは当たらないと思うんだよね
「大切、なんだねい」
「はいっ!」
「きり丸も」
「名前先輩も」
「「大好き!」」
にっこり笑う。マルコさんも笑ってて頭をグシャグシャに撫でられる
先輩とかがしてくれるみたいなちょっと荒っぽい感じに首がグラグラ揺れた(マルコさんはちょっぴり無表情だけど、周りを見る目が凄く優しいから大好き!)
「「きゃー!」」
「あー、乱太郎としんべヱ頭撫でて貰ってるー!」
「ぼくもー!」
「よし、お前ら来いよい!」
『きゃーー!!』
‐君の笑顔を取り戻せ!!‐
そのためなら、いくらでも我慢するよ
だって、ボクたち家族でしょ?
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