□事実は…
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きり丸から溢れだした涙に、ちょっと安心した


甘えだとか悲しみだとかの感情を吐露する事が苦手なきり丸。ずっと、溜め込んでいたのよね



すぐにでも抱きしめたい衝動に駆られるが、ぐっ、と堪えた



「きり丸、報告を」


涙を、拭ってやる

コレからは忍の会話だ。きり丸も忍たまならば耐えねばならない



肩はひくっ、ひくっ、と揺れていたけどそれには目を瞑ってあげよう
見上げる顔に涙はない。唇を噛み締めひたすらに耐えているから




「忍術学園に損失は?」

「名前先輩以外に、死傷者なし。敵襲、なし」


「テッポウタケ城は?」

「忍たま、くのいち教室の全上級生が、報復後、殲滅、落城しました!」


「死体は?」

「卒業生の先輩を含むテッポウタケ忍者の、死体は、救援に向かった七松小平太先輩が処理したと聞いています



名前先輩の・・・死体は



土井先生が、学園に運んできて


先輩が育てた菜園の裏に、埋葬されたっス・・・」







死体、ちゃんとあったのね


在学中に死んだ身寄りの無い生徒は学園の敷地に埋められる。墓標は作られず大地の糧となる



だが学園外で殺された生徒の多くは死体が見つからない
死体を残せば足が付くからだ

倒れる直前に見た土井先生は幻覚などではなかったらしい



埋葬まで、しかも愛する学園に埋めて貰えた、なんて、私は幸せ者ね



家族に怪我はない。敵も殲滅。元々の偵察任務も落城したなら意味ないし。これで心配事はなくなった



「報告ご苦労」



これで忍としての会話はお終い。にこり、微笑んで、くの一対忍たまから姉と弟に戻る



「私の死体見たでしょう?どうだった?」

「名前っ」

なに聞いてんだよ!



エースさんのとがめる声が聞こえるが、これでいい

私たちは、これでいい



だって、見て下さい。この子は笑ってるでしょう?



「きれい、だった!」




















‐別れ際こそ美しく‐


きれいにきれいに着飾って

貴方の心に焼き付ける

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