二
□宴
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「ご飯おいしー!」
「シンベエはエース隊長みてぇに食うな!」
「ナメクジ体操始め!」
「うおぉ!ナメクジが屈伸したぁー!?」
「きゃーっ、高ぁい!!」
「あー!伊助ジョズさんに肩車してもらってるぅ」
「僕もー!」
「ワハハハ!それ!」
『きゃーっ!!』
「名前先輩ー!」
「先輩手繋いで下さい!」
「ふふ・・・えい!」
「「きゃー!!」」
辺りを見渡せば無邪気にクルーと戯れる忍たまの姿
名前はさっきから2〜3人を抱きしめクルクル回ってる
俺たちを前に怯えて飯も食えないとか、名前の傍から離れられないとか、そんな心配は杞憂に終わった。歩き回るのを止め、端で静かに呑んでるビスタに近づく(奴はいつも甲板が見渡せる場所で呑むからねい)
そしてビスタに隠れていて気付かなかったが、横のイゾウの前にはショウザエモンが座りこの世界について質問してる(子供が一人離れて海賊の前にいるとか、普通出来ねェがよい)
「ショウザエモン、食ってるかい?」
子供の頭上から声を掛けると、カクン、頭が後ろに倒れて大きな瞳と目が合う
マルコさん!満面の笑顔とキラキラした眼差しに戸惑ってしまい、苦笑。こんな視線を向けられる事に慣れてない
そういえば、他の忍たまもそうだ。好奇心一杯の目で親父やクルーを見つめ、近寄る
悪い気は、しねェよい
ガキの相手なんざしたことねェ集まりだ。最初は戸惑ってたクルーも今は一緒に転がり回ってる
「マルコさんマルコさん!マルコさんは不死鳥なのですね!」
凄いです!
飛べますか?
食事はどうするんですか?
やっぱりミミズとかですか?
矢継ぎ早な質問。多少ズレた内容だがまあ頭を撫でて許してやる(爆笑してるイゾウとビスタは後でシメる!)
「確かに鳥になって飛べるが、別にそのまんま食事したりしねェよい。あとミミズは絶対食わねェ」
「分かりました!」
手が使えませんもんね
・・・本当に分かってんのかよい
溜息を付き横に座る
「くく、俺達ぁ海賊なのに物怖じしねぇな」
見ろよジョズの奴、何人くっ付けてんだ?
笑うイゾウが指す先のジョズは肩、腕、頭にまで忍たまを乗せてドタドタ歩き回っている。お前それ危なくねェかと思ったが、足元で名前が笑ってるから落としても大丈夫だろう
「海賊が怖くはないかね?」
「怖くないです」
あっけらかんとして答え、白ひげ様はおっきくてビックリしましたけどと笑った
「普段から学園長先生を狙う暗殺者とか山賊に追いかけられてるし」
「苦労してるねい」
「海賊の知り合いもいたし」
「ああ、船酔いするという船長だったか」
「はい」
「それに白ひげ海賊団の方は悪い人じゃないと思います!」
真っ黒な目が、見つめる
純粋な、とは言えない(世の中をちゃんと知った目)真っ直ぐな視線をぶつけてくるこいつは、俺たちが海賊だという事を理解している
「根拠は?」
「一年は組の勘です」
あ、それと名前先輩が笑っておられるからです
海賊というモノを理解して尚、それでも悪い人じゃないと言う
名前の言葉を思い出した
『私達が六年かけて漸く得た物を何の苦もなく直感で感じ取る』
「流石だねい・・・」
「いえ、まだまだです」
生真面目な回答に三人で笑った
「ギャー、何か踏んだー!!」
「あ、それしんべヱの鼻水です」
「う、動けねぇ!」
「鳥黐(とりもち)みてぇだな」
‐まさかとは思うが‐
名前を迎えに来た、なんて
んな事言うなよい
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