二
□落下のち再開
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マルコは泣き声の響く甲板で柱にもたれ掛かり座った。執務室で作業中、飛び込んできた4番隊のクルーに取り敢えず来て下さいと担がれ、訳も分からず連れてこられたのだが漸く事情が飲み込めた
少し先には名前に、小さな水色がへばり付いているのが見える
「きり丸、乱太郎、しんべヱ、ちゃんと学園に帰れた?」
『は、い!』
つり目に八重歯の少年。ぎりぎりと唇を噛み締め泣くまいと耐えているが、くしゃっと歪んだ目元は痛々しい程赤く腫れている
ふっくら真ん丸の少年の鼻水は長く垂れて、眼鏡がずり落ちた雀斑の少年の肩にへばり付いていた
そしてマルコの背後には騒ぎを聞きつけ遠巻きに見つめるクルー達。本当はメチャクチャ話し掛けたいが感動の再開を邪魔しちゃ悪いとの配慮だ(荷の影に隠れてるつもりだろうが、丸見えだよい。デケェから)
三人の頭を順々に撫でる名前に涙はない。ただその表情は穏やかでくの一というより‘母’や‘姉’と表現する方がしっくりくる(親父が俺たちを見るときと一緒の目だよい)
そんな目もするのだなと新たな発見にドキリと跳ねる、心臓
「庄左、三郎の手綱握ってる?」
「はいっ!」
「伊助、兵助を支えてあげてる?」
「あ"い…」
「喜三太、忍ナメの訓練は順調?」
「ぐず、はいぃ〜」
「虎若、照星さんとの鍛練は出来てる?」
「はいっ」
「団蔵、文次郎のせいで風邪ひいてない?」
「は、はいぃ!」
「金吾、小平太には付いていけてる?」
「はい!」
「三次郎、兵太夫、絡繰り造りははかどってる?」
「…はい…」
「、勿論です!」
一人一人視線を交えながらにこり、微笑む名前。決して涙を見せないのは感情が乏しいからではない。自分が泣けば、この子たちは更に悲しむと知ってるからだろう
「皆が元気でよかったわ」
だから、微笑む
逢えてよかった
無事でよかった
それだけが伝わればいい
「ぜんばい〜!」
「ぼぐだぢ、づよぐなりまず!!」
「立派な、忍者に、なる、ので!」
『安心してくださいー!!!』
心強い誓いを叫ぶ、可愛い可愛い子供たち
抱き締め俯く名前の瞳はよく見えない。だがきっと幸せそうに細められているんだろう(ホントに、うれしそうだよい)
柔らかそうな腕に包まれ、よい子達は暫く泣き続けた
‐貴女に誓う‐
強くなりますっ!
先輩みたいに!!
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