二
□落下のち再開
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それはある晴れた日の朝だった
『うひゃあぁぁあ!!なんでそぉらああああぁ!?』
‐ドサドサドサ‐
甲板の少し上、空中に響き渡った高い声は子供の悲鳴
仕事を終え同じ隊のクルーとのポーカーに勤しんでいたサッチが「ん?」と上を向いたと同時に降注いだのは井桁模様の水浅葱
「ぶはっ、な、なにこのチビっこいの!?コラッ、髪は触っちゃダメ!」
「うわぁ、このオジサンスッゴい髪型!」
「ここドコぉ」
「潮の匂いがするよ?」
「学園に居たのにどうして潮の匂いがするのさ」
「庄左ヱ門〜ボクお腹空いたよぉ」
ぽかーん、という効果音が聞えそうな顔のクルーの目の前では、仰向けに倒れた隊長の上にチビっこい子供の小山
キャンキャン好き勝手に騒ぎまくる彼らはスカーフを引っ張り、リーゼントを握ってつついて引っ張って・・・
「空から降ってきたぞ?ここは子供が振る海域か?」
首を傾げるエースに、んな訳あるか!!とツッコミを入れながら一人一人甲板に下ろしてやるサッチ
きょときょとと辺りを見回す子供等は恐らく10歳前後。そのうちの一人と目が合って、はたと気付く
・・・ちっさい。立っても座っても大して変わんねェ。兎に角ちっさい。こいつらにとっちゃ色々規格外な俺達は化け物と変わらないんじゃねェか。陸じゃあ大人だって恐怖する白ひげ海賊団だし(揃いも揃っていかつい面構えだしなあ)
泣くかな・・・と、クルーが身構える
だが子供等の声は至って明るいものだった
『オジサンこんにちはー!!』
‐ずべしゃっ‐
一列に並んで行儀良く頭を下げる姿に、ずっこけるクルー。え、なにこの子!?泣くでも怯えるでもなくニコニコ笑ってご挨拶出来るよい子たちといえばそうなのだが・・・
この肝の据わり具合に、奇妙な格好は、もしかして・・・
「お前ら、忍者か?」
見覚えのある衣服。色の違いはあれど、その造りは名前の忍装束と瓜二つ!
ならばこいつらも忍者か?と疑問をぶつけてみればキラキラ輝く11の瞳
「おじさんスゴーい!」
「私たちは忍者の卵」
『忍たまでーす!!』
「忍たまって、まさか!?」
「おいっ、誰か名前呼んで・・・」
「きり丸!?」
背後から猛スピードで近づいてくる気配。船内から走って来る名前の姿に、子供等が目を見開いた
『名前先輩こんにちはー!!!』
「はい、こんにちは」
‐ずべっ‐
「え、名前ちゃん?何このやりとり・・・」
「て、先輩ー!?」
「先輩だ!」
「い、生きてるよ!」
コロコロ表情を変える子供等。笑顔で挨拶したかと思えば次は驚愕し、今は名前の体をペタペタ触ってる
サッチ以上に揉みくちゃにされながらも好きにさせる名前。その表情はクルーが目を剥くくらい、穏やかなものだった(例えるなら、母や姉のような)
いつもはサラサラな黒髪がグシャグシャに絡まった頃
一斉にぶわっと泣き出した子供等
「ぜ、ぜんばいー!!!」
「うわあぁぁあん!!!」
「ぜん、ばい!ごめんなざい!」
「お、おれだぢのぜいで…!」
うわあぁぁん!!
ごめんなさい、ごめんなさい
名前先輩、先輩先輩
逢いたかったです
寂しかったです
抱きつきながら(否、しがみ付きながら)顔から出るもの全部出す子供等と、そんな彼らを苦笑しながら優しく頭を撫でてやる名前
「馬鹿ね、大切なモノを守るのは当然よ。貴方たちは私の宝物なんだから」
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