一
□鍛練始動
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「・・・ま、大丈夫ね」
服を脱ぎ診察台に横になる名前は安心して息を吐いた
「抜糸の跡もきれい。鬱血もない。多少皮膚が引きつれるのは我慢してね」
「あの、鍛練は・・・?」
目が覚めてから殆ど体を動かしていない。このままでは身体が鈍ってしまう
ナースのイザベラさんがカルテから顔を上げるとニッコリ笑った
「もう大丈夫。けど無理は禁物よ」
「ふふふっ!」
傷は完治
鍛練再開の許可も下りた
思わず笑みが零れる
さて、何から始めるか・・・
最初はストレッチに準備運動。今日はハルタさん率いる12番隊が甲板で鍛練をしてるから交ぜてもらおう!
それから筋トレに走り込み・・・本当はもっとやりたいが『いい?無理は禁物よ!』と念押しされているからこのくらいにしよう(医療関係者には逆らってはならないと体が記憶している。伊作のせいだ!)
「ハルタさん」
「名前、なに?」
甲板でクルーと組み手をしていたハルタさん。きりのいい所で声を掛けると、ん?、首を傾げた
「鍛練?いいよいいよ。おいで!」
「ありがとうございます」
と言っても、ストレッチと筋トレ位しか出来ませんが・・・
それでもハルタさんは構わないと笑ってくれた
「ダンベルとか器具は揃ってるからね、好きに使ってよ」
「ありがとうございます」
適当に開いている場所に座り入念に身体を解していく
「お、今日は名前もいるのか」
「もう傷は大丈夫なのか?」
「なんか手伝うか?」
所々から掛けられる心地よい声、声、声
お邪魔してもよろしいですか、と問えば「大歓迎だぜ」と野太い笑い
相変わらずお人好しな人達だと思うのだけど、彼らにはソレが似合っていて、自身もこの空間が心地好いと感じてしまうのだ
ふふふ、自然と笑みが零れた
「それ、お借りしてもいいですか?」
十分に解れた身体。大きく腕を伸ばし立ち上がる。クルーが持ち上げていたダンベルを指差した
「いや、いいんだけど・・・」
結構重いぜ、と続く言葉は飲み込まれた
「んー、100キロ位ですか?」
「・・・・・・」
病み上がり、しかもその細腕で軽々持ち上げポンポン、お手玉の如く放り上げる
負荷が弱いなぁ。もう一つくらい・・・
そして、床に転がるもう1つに視線を落した
「それも、いいですか?」
コクコク頷くクルーに頭を下げ、持ち上げるとそのまま正面に向かって拳を突き出す
「「・・・」」
「あれ、何キロだっけ?」
「俺、いっこでやってんだけど」
「筋肉無さそうなのに」
「腕、メッチャ細かったぜ?」
‐人は見た目によらぬもの‐
忍者って、スゲー!!
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