□保父さん!?
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それは朝食後、甲板に丸テーブルを出し気に入りの茶葉で淹れた紅茶を飲んでいた時だ



突如賑やかになった甲板。普段から騒がしいのだがソレとは違う、何故か聞こえる子供の声
其方から走ってきたクルーに聞けば名前の弟分がやって来たのだという



カップをテーブルに置く。琥珀色の液体は既にない。腰を上げ食堂へ向かう

名前の弟分の話は気にはなるが、まあこのカップを戻してからでもいいだろう




そして再び甲板に出てみれば・・・



マルコが子供を抱き上げていた



ざわり、騒がしくなった甲板

驚き声を上げるクルーにつられ、俺も思わず息を呑んでしまった



抱き上げられた子供は禁句を口にしてしまったが、凶悪顔のマルコに怯えもしない。海賊相手にへにゃりと笑うその度胸は忍たまだからだろうか



あの後クルーは仕事どうした!邪魔だ退け!の怒号に散りじちになったが、5番隊は特に仕事もない(常に報告書を溜めている男とは違うのだよ私は)



だからそのまま積み荷に座り観察していたのだが


「・・・っ、これはこれは」



なんとマルコが、あの1番隊隊長が少年の鼻水を拭いているではないか!
隣のクルーも口をポカンと開けてその様子を見ている。それほど珍しい光景なのだ



「ふんっ、てやれよい」なんて声には流石に笑ってしまったよ







マルコという男は冷めている


勿論家族に対してではない
それ以外に全く関心がないのだ。愛情の反対は無関心だと何処かで聞いたが、まさにソレだった



だから驚いた。惚れた女の弟分だからといって他人の子供の世話を焼くような奴じゃあない(大体女に本気になるのも始めて見たのだ)



基本世話焼きな男であるのは事実だが・・・エースの時がそうだったな

だが今回は違う。アレは家族にすると親父が宣言していたが彼女らはいつか消える人間だ。家族にはならないだろう



それなのに、マルコが世話を焼いている



「丸くなったな、うちの不死鳥は」



冷たい、刺すような視線は随分減ったと思う。確実に。代わりに表情が出てきた



変えたのは俺達家族ではなく未だ15のくの一、名前



『幸せを呼ぶ青い鳥』



あの時のマルコの顔が忘れられない。いつも自分を卑下する奴だった。そうじゃないと言ってやりたくて(家族の死は、お前のせいではないのに)、でも言えないのは俺達が随分大人になったからか





名前が来てこの船は変わった。親父は前よりよく笑うし、クルーにもよい刺激になっている(彼女と鍛練する姿は生き生きしている)

















‐俺は海賊‐


名前には悪いが

帰れなければいいと思うくらい

お前が欲しいよ


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