二
□姉さんが〜夜なべをして
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縫部屋から漏れる灯り。消える気配のないそれに思わず溜息を吐き、扉を叩く
迎え入れた彼女は彼が運ぶ物を見て、ニッコリ微笑む。疲労の色は見られない。むしろ、とても楽しそうだ
「ありがとうございます、マルコさん」
マルコの左手、トレーに乗せられたポットとカップ、右手に持った小さな籠
ポットにはハーブティー、籠にはサンドイッチとクッキーを詰めた
まぁ作ったのはサッチで、マルコは運んだだけなのだが(作れっつったのは俺だからよい!)
嬉しそうにテーブルの上を片付ける名前が可愛いから、言わないでおこう
「まだ寝ないのかよい」
「むぐ、ん・・・私が出来ることは全てやってあげたいんです」
クルーの方々の修繕作業は最初に終えた。今テーブルを占めているのは、弟たちの服
材料は白ひげ海賊団の皆さんから頂いた
ナースの方々は古くなったシーツと、古着のショートパンツやシャツを
ハルタさんは昔趣味で集めていたという沢山のサンダルを
イゾウさんは端切れを籠いっぱい
ナミュールさんは魚人島で流行っているという可愛らしい子供用のタンクトップを下さった(何故子供服?と思えば、通販に失敗したんだと苦笑い)
最初はナースの皆さんだけにお願いしたのに、そういう事なら待ってなさいなと、古着や布を持っていそうな方々を回って下さったマリアンヌさん。俺も俺もと、部屋へと走るクルーの方々。なんて、なんて優しい人たち(今度甘味をご馳走させて下さいと頼めば、待ってるぜと、手を振って下さった)
「帰るまで必要ですから」
今は夏島の海域に入る所。とりあえず、タンクトップと袴やズボンが有ればいい。冬島の海域になったら半纏でも作ろうか
「何となく分かるんですよ。あの子たちは、帰れる」
何故だか、そう思った。自分には感じなかった奇妙な感覚。可愛い弟達が酷く儚くて、目の前にいるのにどんどん離れていっているみたいな・・・
敏感な彼らも気付いている。誰一人『一緒に学園に帰りましょう』とは言わなかったから
きっと、別れを告げる為の巡り合わせなのだろう
ならば悲しんでなんかいられない
愛する者の為に、してあげたいことが山ほどある
神の気紛れか何か知らないが、使えるものは利用させてもらおうじゃないか!私が出来る全てを彼らに与えよう!
‘さようなら’を、ちゃんと言おう
「・・・手伝えることがあれば言えよい」
‐パタン‐
はい、そう笑うが、お前さんは一人で頑張っちまうだろう?
俺たちだって、お前たちの為に何かしてェよい
‘客人’のお前には、こうして声を掛けることしか出来ねェ・・・
惚れた女の為に何かしたいと、この気持ちを伝えたら、名前はどんな顔をするだろうか
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