二
□家族に愛されて
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別れは笑顔で
じゃなきゃ、名前先輩は安心出来ないだろうって思ったから
「善法寺先輩と新野先生が体を清めて」
『有難うございます、名前さん』
『名前の体は、ちゃんと綺麗にしてあげるよ』
斬られた傷はきれいに縫合されたよって乱太郎から聞いた(俺は図書委員だから立ち合えなかった)
「くのたまが、化粧して」
『妹達、涙を見せてはならん』
『『『はい!』』』
『名前お姉様、今までで一等綺麗に仕上げまぁす』
お姉様とってもキレイよ、あんた達腰抜かすんじゃないわよって、真っ赤な目のユキちゃんに聞いた(そんな事知ってる。先輩はいつだって一番きれいなんだ!)
「タカ丸さんが、髪を結って」
『すっごく、すっごくキレイだよ名前ちゃん』
飾りは全部タカ丸さんが準備したんだ。スッゴく上等なのばっか。お願いして、簪を一本追加して貰った。卒業するときに贈ろうと思って俺が買ったヤツ。他に比べたら随分安物だけど、どうしても持って行って欲しかった
「作法委員会の、振袖着て」
『秘蔵コレクションの中でも、一等良いものでーす』
『私より名前の方が似合うからな。特別にくれてやろう』
どこかのお姫様みたいって三次郎が言って、兵太夫はお姫様なんか適わないよ。だって名前先輩はとっても強いくの一だろって言った
「用具委員が造った棺に、入って」
『馬鹿野郎、こんなもん作らせやがって』
『先輩、棺に飾り彫ってもいいですか?』
『ああ、思いっきり凝ったの彫ってやれ』
『・・っス』
先輩達、一晩中飾りを掘ってたんだよ。名前先輩が寂しくないように皆のイラストになってるよって、教えてくれたしんべヱと喜三太
「中在家先輩の朝顔や、皆で摘んだ花に、囲まれてぇ・・・!」
『ぷぷ、緋衣草って・・・潮江先輩ロマンチストだな雷蔵!』
『聞こえてんぞ鉢屋!』
『すみません先輩!でも素敵です。花言葉は‘家族愛’』
『・・10キロ算盤を入れようとしたので止めた・・ボソボソ』
『兵助、豆腐はダメだ』
『何でだハチ!』
『水気多いからじゃないかな。氷豆腐にしたら?』
『流石だよ勘右衛門!』
『・・小平太、バレーボールも止めろ・・』
『何でだ!名前はバレー好きだったぞ!』
いつもと同じように、ギャーギャー騒いで、笑い合う先輩達。でも中在家先輩の声はいつもより大きくて、無理してるみたいだ(中在家先輩は図書委員長だから、俺よく分かるんだ)
「天女さまみたい、で」
『名前、綺麗ですね』
『そうじゃな半助』
『ぐずっ、名前さん〜』
『小松田くん、泣くんじゃありません!』
「綾部先輩が、穴を掘ってぇ」
『見てくださいよ、名前先輩。すーっごく綺麗でしょ?特別に先輩の名前付けてあげますね。ちょっと滝三木、早く土運んでよ』
『阿呆八郎!土を掛けるな、滝夜叉丸に掛けろ!』
『何だと!』
『煩い』
‐ガンッ‐
‐ブチッ‐
『わ、私の美しい髪がああぁぁ!!』
「笑って、お別れしましたぁあ!!」
俺たち、泣かなかったよ
偉いだろ?
だからかなあ
また名前先輩と笑い合える
こんな幸せな『夢』を見れるなんて
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