一
□疑似笑顔
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「マルコ! 早く、早く行こうぜ!!」
ハロー、愛の伝道師サッチだぜっ!!
ついさっきクルーから「眠り姫がお目覚めっス!」って聞いてこりゃ宴だなっ、て訳でコックと4番隊を総動員して準備始めたってわけ
キッチンで食材を切り続ける事30分
特注巨大フライパンを力強く振り続ける事一時間
「眠り姫の歓迎会っス!!」って走ってきたクルーに歓声を挙げながらドレッシングをかき混ぜる
なんとか餓えたヤローどもの胃を満たせるだけの料理を作り(まぁこれだけ作ったってすぐなくなっちまうんだけどなっ。末っ子がな、うん)、一息つくと我が家の長男がいたんだ
「・・・チ、なんだよい」
「お前、俺今まで飯作ってたんだけど!?」
優しさ! もっと優しさプリーズ!!
絡む俺を面倒くさそうに見やって、舌打ち一つ
「・・・・・・今から名前呼びにいくんだよい」
「お、名前ちゃんってのか!」
かっわいー名前だなあ!
思わずにへらと笑えば、鼻の下伸ばしてんじゃねェよいって殴られた(ふふ、これも兄弟間のコミュニケーション!)
「な、話したんだろ? どんな子だったよ」
「・・・やけに強ェ目のガキ」
エースん時とどっこいどっこいだねい
右手で首筋を擦りながらの言葉。てゆうか可愛い女の子にその表現どうなのよ
「なんだよー、もっと声がかわいいよい! とか、笑顔がキュートだよい! とかさあ」
「沈められてェらしいな」
横でちらつく青い炎にバッと距離を取ると、さっきより大きな舌打ち一つ
「まぁまぁ、そんなわけで」
俺も名前ちゃんの部屋行くぜ!
てかお前ばっか役得じゃねェか! 俺だって話したいんだぞっ、メチャクチャ我慢したんだぞっ!
仕事と女の子はちゃんと区別する男なのよ俺
面倒くさそうなマルコを急かして部屋に向かう
「ああ、そう言やァ」
思い出したように呟かれた小さな声。振り返ると眉間に皺をよせたパイナッ・・げふんげふん・・マルコがいた
「親父の前ではちったぁましだが、笑顔貼りつけてやがったよい」
それがまぁ、気に食わねェよい
「お前、それ・・・っ」
自分にも笑顔向けて欲しいってことじゃねェの??
思わず飛び出しそうだった言葉をすんでで飲み込む
あの、マルコが
女に、てか家族以外に無関心なマルコが!
女が笑ってようが怒ってようが泣いてようが「は? だから何?」なマルコが!!
心から笑ってない。そんなコトを気にする日がくるなんて!!
‐ああ、マジで君と話したい‐
あー、忍者なんだし、しかたねェんだろ?
・・・まぁ、よい
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