二
□よい子たちと海賊のとある日常J
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『虎若の前で照星さんの話をするときは気をつけて下さいね』
いつだったか、名前の言葉に首を傾げた頃が懐かしい
「トラワカはどんな忍者になりたいんだ?」
そう聞いたのが運の尽きだった
「それでですねっ、その時照星さんが現れて火縄銃を渡してくれたんです!!」
照星さんについて語る虎若の話は尽きることがない(うっかりエースの弟について訊ねてしまった時のことを思い出した)
照星さんがどれだけ素晴らしいか
照星さんがどれだけ強いか
照星さんがどれだけカッコイイか
照星さんがどれだけ凄いか
照星さんにどれだけ憧れているか
照星さん照星さん照星さん照星さん照星さん照星さん照星さん照星さん・・・
もうエンドレスで続く照星さん自慢にまた始まったよ…、なよい子たちは一人、また一人とその場を離れて残るは庄左ヱ門と白ひげクルーのみ
自分たちから話を振った手前立ち去る事も出来ずにいた
始めは微笑ましく聞いていたクルーの表情が引きつってきた頃
彼らに不思議な感情が芽生えてきた
なんだか、よく分からないけれど・・・
さ み し い ?
不可解な感情に首を傾げると、庄左ヱ門が「多分気付きませんから離れて大丈夫ですよ?」と心配そうに此方を見上げてきて、慌てて大丈夫だと、自身に芽生えた不思議な気持ちについて話した
「なんなんだろうな、この気持ち・・・」
「ぼく、その気持ち知ってます」
にっこり
「‘父性’って、言うんですよ!!」
庄左ヱ門の言葉に驚き顔を見合わせると、なんだか恥ずかしくなって頬を掻いた
こちとら海賊家業
‘家庭’なんてものとは無縁に生きてきた
俺たちには偉大なオヤジがいて、沢山の兄弟たちに囲まれている
それは確かに家族だが、やはり‘家庭’とはどこか違う
そんな俺たちが‘父親’だなんて、想像すらできないが
「もし、息子がいたら・・・」
「こんな気持ちに、なるのだろうな」
「それでですねっ、その場照星さんが颯爽と現れてですね〜!」
「虎若、その話しもういいからっ!!」
−耳にタコだっつうの−
それは蛸だ、キリマル
どうしたのさそのタコ
夕食で使うんだと。ちょっと届けてくる
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