一
□強者
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深夜のモビー
つい先程まで聞こえてきた宴の喧騒も今はなく、波と風の音が聞こえるのみ
見張り台に座るのは12番隊隊長ハルタ
賑やかなモビーは勿論好きだ。でもこういう静かなのも、嫌いじゃない
サッチに貰ったリキュールティーを飲みながら、何処までも暗い海を見つめる
ふと、甲板を横切る影
ちょっと前、ナースにリハビリの許可が下りたと言って一緒に鍛練した、名前だ(忍者ってものがあんなに驚異的だとは、思わなかったなあ)
彼女は最初に着ていた真っ黒の装束で、甲板を物音一つ立てずに走っていた
「おーい、名前」
「今晩はハルタさん」
不寝番ですか?
そう言ってジャンプ一つで見張り台に飛び乗った姿からは、数日前まで寝たきりだったなんて想像出来ない
「うん。名前はこんな夜中まで特訓?」
「夜は忍者のゴールデンタイムなんです。走り込みだけでもやりたくて」
彼女の髪は汗でしっとり濡れてて、気だるげに掻き上げる仕草が色っぽい。なんかドキドキするなー、でも15才なんだよなー、とか考えちゃうのは、仕方ないよね
「あ、邪魔しちゃった?」
「もう終わろうと思ったところです」
「じゃ、ちょっと喋ってかない?」
湯気の立つポットを指すと、タオルで汗を拭う名前がニッコリ笑った
「いい香り」
「ビスタから貰った茶葉らしいからね」
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