□間に合わない救援
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目の前で池に落ちた名前の体



水しぶきを追い掛け飛び込む

沈む体を抱き寄せると水面を蹴った



「名前!」



腹からの出血を止めようと装束を脱ぎ傷口にあてがうが、既に流れ出た血が多過ぎる



周りには無数の血肉。その中に横たわる元生徒の姿に、ああ彼女が相手だったかと、自然と強ばっていた口元が緩む(だって、彼女の死顔はとても幸せそう)



せめてこの子は助けてやりたい(だって、まだ卒業前)。止まらぬ出血に唇を噛むと先程追い越した小平太が到着した



「先生!」



目の前の光景に目を丸くする







名前が、眠ってる・・・


「名前・・・名前?」



眠ってる?


眠って・・・血を、流して・・・

そんな・・・っ



三日前には笑ってて


帰ったらバレーしようって



嘘だ



違う。違う。違う違う違う違う違う違う違う!




「小平太!」
「っ、」



名を呼ばれ顔を上げる



止血の手を止める事無く、土井先生の表情は厳しい



「やるべき事はなんだ」



やるべき事・・・やらなきゃいけない事は、よく分かってる。授業で、実習で、沢山沢山経験したのだから



「名前を、学園に連れてく。死体の処理と、残党の有無・・・」



頷く先生は名前を抱き抱えた



「私が連れて行く。後は任せるぞ」


抱き上げられた名前の顔は、驚く程白い



それは、何度も見てきた、死に往く者の顔・・・



「はいっ!」







一瞬の内に消える二人


土井先生の足は速い。すぐ学園にたどり着き、名前は医務室に運ばれるだろう




それでも、きっと








名前は・・・助からない








握り締めた拳から自身の血が滴り落ちた

















‐君に届かぬ謝罪‐


涙は、出ない


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