あの日から(学園 筆頭落ち)
□アメとムチ
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「―――というわけで勉強会メンバー募集中なの!!」
丁度伊達君が廊下にいたので呼び止め、現在に至る。
「勉強会?なんだ由梨アンタ優等生じゃなかったのかよ。」
「ん?一応そうだけど、今回は風邪引いたこともあって少し自信がないからさ・・・出来るだけ優秀な人と勉強したほうがいいと思うんだ。」
もちろん。これには裏の魂胆がある。どうせ学園ものかなんかでやる勉強会とか言うのは覚わらないものなんだ。
だって考えてもみなよ。仲良しこよしの友達が集まって、さぁ勉強するぞ?ありえない。
しゃべりにしゃべってそのうち勉強を忘れて気がついたころにはもう夜中。
それで焦って徹夜で勉強する羽目になって結局だめな結果しか残せないのが落ちだ。
私はそういう意味の勉強会じゃない。優秀なのをなるべく『落とす』ための勉強会だ。
今から私がどれだけがんばろうったってたかが知れている。ならば、上記の方法でなるべくライバルを『落とそう』じゃないか。
え?卑怯者?なんだっていいなよ。私は生活がかかってるんだから。人間やっぱり根源は『自分のため』なんだ。
否定するやつはただの奇麗ごとだけで生きてきた人間か、自覚のない人間だ。
たとえば、受験。これは周りの人を蹴り落とすものでしかない。そう、『自分のため』に。これを否定できるものがいるかな?
誰かが幸せになれば、どこかの誰かが不幸せになる。そういう砂時計方式で出来てるんだよ、世の中なんて。
汚らわしくて結構。それが私だ。穢れを知って生きる私だ。
「Hum・・・ま、俺はいいぜ。」
「本当!?ありがとう!!後は誰を誘おうかな!」
今のところ一番恐ろしい存在だった伊達君が参加してくれた。だって転校してきたばかりだから成績がどれだけかを私は知らない。
だから私は普通の頭いい人たちよりも彼を恐れていた。だけど、よかった。これで不安が一つ去った。
「ほう?天乃がなにやら面白そうな話をしておるな。ちと混ぜてもらおうか。」
と言いながら大谷先輩と石田先輩、そして毛利先輩がやってきた。
・・・すごい人オールメンバーだね。
「え、えっと、明日はテストなので勉強会をする話を・・・」
「やはり貴様のする話など程度が知れているな。学ぶ会など開いてなんとする。」
相変わらずひどい言い方だなぁ・・・毛利先輩は。
「それ言ったら学校そのものの存在を否定することになりますよ。理由は・・・まぁ、風邪で休んだこととかいろいろです。」
「アァ、三成から聞き及んでおるわ。さぞ大変だったろうて。」
「はい。まぁ。それで、あの、先輩方も参加してくださいませんか?」
先輩である彼らならテストにどんなところが出やすいかも知っているだろうから。
「・・・我らに共に学ぼうと申し出るか。これは面白き案よ。やれ三成。主はどうしやる?」
「・・・・・・構わない・・・」
さすがに後輩と勉強するのは恥ずかしさがあるからか、小さな声で言った。よかった。石田先輩こそこの中で一番断りそうだったから。
・・・だから、私は思い切り石田先輩に抱きついた。いや、抱きついてしまった。
「ありがとうございます石田先輩!!」
「よ、よせ。離れろ・・・」
「・・・あ、ごめんなさい・・・」
やっちまったと思ったけど後の祭り。大谷先輩はニヤニヤしていて、毛利先輩はなんだか怖い顔してる。
伊達君が・・・なんかいかつい。さわやか青年どこ行った。
「我は断らせてもらおう。捨て駒に付き合うほど我は暇ではない。」
と吐き捨てて去っていった。
「そういえば、どこでやるんだ?由梨の家か?」
「あ・・・そういえば私の家は今日はちょっとだめなんだ・・・」
「・・・ならば私の家でいいだろう。」
「石田先輩のですか?いいんですか?」
「構わ―――」
「我も参加してやろう。」
颯爽と毛利先輩が戻ってきた。
そしてさっきとは真逆の言葉を告げた。なんだこの人。まさか石田先輩のことがす・・・まさかのBえ・・・なんでもないですごめんなさい。