あの日から(学園 筆頭落ち)

□誤解と真実 9:1
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―――あれだけ今日という日を恐れていたというのに、ぐっすり寝られた私は結構図太いのかな、と自覚せざるを得ない。



朝。制服に着替え、昨日のお惣菜屋さんのおかずを朝食として食べて現在、弁当作り。
今回は中華。別に今日は私しか食べないからいいのだけれど。




弁当の積み込みも終え、歯磨きをし、昨夜書いた遺書を引き出しにしまう。そして、いつもより少し早いが家を出た。
これ以上家にとどまっていたら絶対学校休んでしまう。それは成績的に非常によろしくないので後ろ髪を引かれる前に家を出たかったのだ。




はじめの一歩を踏み出せれば意外とすんなり諦めることができるものだ。・・・たとえ、命だって。



やはり、まだ朝早いので誰もいない。私の普段登校する時間でもほとんど人がいないのだから当たり前ではあるが。



おかげで音楽プレーヤーの音量を少し上げたところで何も咎められない。音漏れすごいんだ。これ。




結局誰とも会わないまま靴箱へと到着した。自分のクラスの靴箱を見るとところどころラブレターが入っているものがあった。
・・・ッチ。ここでもリア充が生産されるのか。



その中の一つ、もう蟻一匹は入れませんよと言わんばかりにギチギチに手紙が詰め込まれた靴箱に目を留めた。やばいって。靴箱変形してるって。



(ああ・・・これは伊達君の靴箱だね。転校してきたばかりだってのにすごく人気あるんだなぁ・・・)



でも・・・なんだろうね?私にはどうしても伊達君がリア充には見えない。
むしろ、『辛いこと背負って生きてます』って感じすらして・・・どこか全てを諦めてるような・・・・・・!!?



(あれ・・・?なんか・・・すごく、頭が、痛い!!!)



思わず呻き声を上げてしゃがみこんでしまう。何も考えられなくなると、痛みが嘘の様に引いていった。




「・・・? なんだったんだろう。今の。・・・まぁ、いっか。私の靴箱はっと・・・ん?」




自分の靴箱に触れると、何故かカサッという音が。訝しげに手を突っ込むと感じるのは紙。引き出すとそれは手紙だった。



普通の人だったら『ぃよぉっしゃああああああ!!!』と泣いて喜ぶに違いない。・・・しかし、私はそうではなかった。
見た瞬間、固まった。否、逃げたくなった。




今の私にはこの手紙がラブレターではなく、死刑宣告にしか思えなかったからだ。



手紙の表面には赤いインクで『天乃さんへ』と記されていた。
恐らく運命の赤い糸とかそういう縁つながりで赤にしたのだろうけど今の私にはただの血文字にしか見えない。




恐る恐る、中を開く。その中には一枚の紙が。それにはこう書かれていた。




『天乃さん、あなたにお話したいことがあります。放課後、屋上へ来てください。』




差出人は・・・わからない。どこにも私以外の名前がないのだ。それが一番腹立たしい。



なぜなら・・・名前が無ければこれは伊達君もしくは石田先輩が書いたという可能性を否定できなくなるからだ。
というか、二人のどちらかという可能性が一番高いのが憎い。またもや死ネタしか出てこないではないか。



放課後なのはもちろん人が少ないときが一番だからだろう。
告白なのであれば人目を気にしなくてもいいし、殺害なら証拠隠滅が楽だからか。




そして、屋上なのは・・・告白なのであるならば、やはり風景的にベストだからか。
殺害なら・・・突き落とせばそれでお終いだから・・・かな?あわよくば自分の手を汚さずに終わらせたいということか。




私は今猛烈に後悔している。




・・・しまった。こんなことなら遺書を引き出しの中ではなく机の上においておくんだった!!ちくしょう!!
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