あの日から(学園 筆頭落ち)
□学園生活と崩壊進行速度
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―――それからは結局なんにもなく、伊達君は食べて代金払って帰った。
その背中は心なしか寂しそうだった。
・・・まぁ、そんな事を気にしている暇もなかった私は軽くスルーしてしまったけれども。
そんなこんなで一日が過ぎ、今は翌日の朝。学校に行く為、歩き慣れた道を歩いていた。
私の家から学校までは車で行くほど遠くはないが、徒歩で行くのはちょっと遠い、微妙な距離だった。自転車で行くと丁度いいんだけれども。
それでも私は、歩いた。わざわざ朝早起きをして、歩いて学校までいく。
私はこの道を歩くと見れるこの風景が好きだった。
それをゆっくりじっくり見たいがために歩いている。
それに、歩きの方が―――
「おはようでござる!!!今日も早いでござるな!!」
話しかけられやすいし。
自転車だと話しかけられることもなく、無言のまま学校到着になる。それは私の性にあわなかった。
話しかけてきたのは隣のクラスの真田幸村君。家は私が学校に行くときの道にあるので、よく会い、一緒に学校へ行く。
男だというのに後ろにくくられている長い髪。赤い鉢巻は気合がはいるらしい。
純粋で明るくて、嫌いにはなれないタイプだった。
そしてなかなかのイケメン。女の子達も放っておかない。
「おはよう。真田君も相変わらず早いね〜」
一緒に行くといっても、もっぱら話すのは世間話か部活の話。真田君はテニス部。だけど・・・
「当然でござる!!今日も朝から瓦割り50枚と滝行をしてきたでござる!!」
やってることは武道の鍛錬だ。
この近くに小さいながらも水量の多い滝がある。そこで毎日滝行してんだとか。
普通テニス部なら素振りとかだろ?って思ってる人。気持ちは分かるがこの人は普通の人ではないんだ。
「それで、この前の大会のとき、武田先生が―――」
「そうなんだ〜!!へぇ、しらなかったぁ〜!!」
「そうでござろう!!しかも―――」
・・・本当に話すのは他愛もないことばかり。
学校では女の子達が彼を囲うので話せない。話せるのはこのときだけ。
でも、いや、だからこそ、楽しい。この時間を大切にしたくなる。
この平穏さが、だいすき。
だから私は徒歩での登校をやめないんだ。
「・・・俺のHoneyとイチャイチャしてんじゃねぇよ。」
ああ、私の平穏をぶち壊すものが一人。仁王立ちで私達の前に立ちふさがった。