過去(とき)の旅人(トリップ? 誰落ちでしょうか?)

□団子よりも華
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※家康視点


「―――ここかの?」


「ゼェ、ゼェ・・・そうだな・・・」



あれから3日が経った。そして、ようやく城下町へと辿り着いた。


城下町ではせわしなく走り回る飛脚、何人かで井戸端会議を開いている奥様方、遊ぶ子ども・・・誰も彼もが、充実した時間を過ごしていた―――



・・・それが昔の様子だった。ワシはそんな姿が好きで見入っていたものなのだが・・・


これはどうだ。



民が、泣いているではないか。泣かないまでも非常に不安そうな表情をしている者もいる。笑顔など、どこにもなかった。



「・・・? どうしたのじゃろうか?」


さすがにここに来たことがない時夜でも異変だと気がついたようだった。


「ワシも分からない・・・少し民に聞いてみようか。」



さらにワシらは近付いていった・・・すると、ワシらに気づいた民がくわなどを持ち、敵意を露にした。



「むっ!!敵め!!城下町には入らせんぞ!!」


「なんでこんなときに敵が・・・くそっ!!」


「俺達がここを護るんだ!!」


明らかにワシらを敵としか見ていない。なんとかして、誤解を解かないとな・・・



「違う!!ワシらは敵じゃない!!ワシの名は徳川家康!!信玄公を師と仰ぐ者!!」



ワシの言葉を聞いた民達がざわざわとしはじめた。


「家康・・・あの三河の竹千代様か!!?」


「たしかにあの三つ葉葵は徳川だ。本物ならば、もしかしたら・・・」



「だが、しかし―――」



なにやら民達が相談を始めた。どうやらワシらを信じてよいものか、思案している様子だった。



「今のままでは、武田が・・・信玄様が―――」


「なに?信玄公がどうかしたのか!?」


民のそんな声を聴いた瞬間、ワシは反射的に聞いていた。

民は面食らった顔をしていたが、ワシが信玄公を思う気持ちを汲み取ったか、話してくれた。


「・・・信玄様は・・・今は病に臥しております・・・それで、幸村様が・・・」



「信玄公が・・・病・・・そうか。もう、この頃から病に・・・」


もちろんワシは信玄公が病に臥すことは知っていた。だが、もうとは・・・


「・・・ふむ。どうする?権現よ。」



民の話を聞いていた時夜がワシに問いかけた。ワシの答えなど一つしかない。



「―――会いに行こう。信玄公に。」


「・・・そうか。では、わやわも行くが、よいな?」


「もちろんだ。・・・じゃあ、誰か案内を頼めないかな。」



「・・・では・・・あっしが・・・」


こうして、ワシらは信玄公のもとへと向かった。
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