過去(とき)の旅人(トリップ? 誰落ちでしょうか?)

□戦場に降り立つは戦場を嫌う者也
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※家康視点



「―――奥州筆頭 伊達政宗。推して参る!!」



遠くの方でそんな声が聞こえた。言葉から分かるが、それは伊達政宗の声であった。




「あっちの方角におるのが総大将か。となると―――」




時夜が言葉を止めた。すると、三成を担ぐのとは別のもう片方の手で懐から一枚の札を出す。




「権現、刑部、息をしてはならぬぞ。―――式神 毒狼!!」




札から紫の霧のようなものが放たれ、当たり一帯の視界が悪くなる。



兵士達が唸り始めた。




「・・・う、何だこれは・・・だんだん・・・意識が・・・」




周りの兵士達がバタバタと倒れていく。




「時夜!!なんなんだ、これは!!」



霧のようなものでどこにいるのか分からないが、必死に叫んだ。



「しゃべるな。息を吸ってしまうであろうが。耐え切れなくなったのなや霧かや離れよ。」



聴こえた時夜の声は、ずいぶん遠いものだった。



やはりこれは霧なのか。風でも吹けば少しは視界が・・・



「! そうだ!この拳の風圧で・・・!」



ワシは両の手に光を纏い、力いっぱい突き出した。すると、その拳の先だけ霧が引いていく。
何度か繰り返す内に部分的に見えるようになっていった。やがて時夜が見えた。



「時夜!!待ってくれ!ワシも行くぞ!!」



時夜が向かう先はどう考えても総大将・・・伊達政宗だろう。




霧の中からわずかに見える時夜の姿を頼りに、まっすぐ突っ切る。すると、いつの間にかワシの視界から霧が消えていた。



時夜は立ち止まることもなく、ワシの方を振り向かずに言った。



「なんじゃ。ついてこないほうがよほど安全じゃぞ。」




「それなら尚更、お前を一人で行かせるわけにはいかないだろう。」



しばらく歩きながら沈黙した。しばらくして言いにくそうに時夜が反論する。




「一人ではない。わやわには式神という仲間がおる。大丈夫じゃ。」




もう苦し紛れなものにしか聴こえなかった。




「それでもワシはついていくぞ!行くか行かないかは、ワシの自由だ!!」



その途端、時夜が歩を、止めた。心なしか体が震えているように思える。




「・・・勝手にするがよい。」




振り返らないまま、言った。否、振り返られないのかもしれない。




時夜の体は震えは依然止まっていなかったが歩き始めた。今の彼女はとても寂しそうで・・・切なくなった。
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