運命(いま)を変える者(トリップ 石田落ち)
□それはあまりにも突然なことで
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私は運動が大嫌いだった。
どうして授業に「体育」というものがあるのかがわからない。
保健はまだ分かる。あれは怪我の適切な治療法なんかも学べるし、生きていくのに大変役立つ。
だから学ぶ意欲も進むというものだ。
しかし、何故体を動かしていく必要がある?
まぁ、私も昔はここまで運動を嫌悪していたわけじゃないけど・・・
そう、すべてはあの日のせいで―――
そして、疑問はもう一つある。
勉強の出来ないくせに運動が得意なやつは友達が沢山いる。
なのになんで勉強が出来て運動が出来ない人は友達が少ない?
全くといっていいほど、理解不能だ。
私には、友達は一人しかいない。
そして、友達は、ゲーマーだった。
私自身は、ゲームなんてやったことがなかった。
というか、やって夢中になったりしたら大変なことになるので、やらなかった。
私には変な能力があった。
それは―――私が触れた他のものの運命を捻じ曲げる力。
分かりにくいので、具体例を挙げよう。
例えば、今にも枯れそうな木があったとする。
私がその木に触れて「生き生きとした、青葉の茂る木になる運命を!!」と念じれば、その木は青葉茂る木になる。
つまり、「枯れそう」という運命がなかったことになり、はじめから、「青葉茂る木」となるのだ。
まぁ、簡単に言ってしまえば触れたものを私の思い通りに変える能力だ。
この能力は無意識にでも発動する。
だから、もし私がゲームをやっていて「この敵、死ね!」とか念じてしまったらシナリオなども変わってきてしまうだろう。
私はこの能力を嫌悪している。この能力のせいで大切なものを失った。
でも、この能力と付き合ってはや6年。
慣れてくると、自然と油断が生じるものである。
そしてそれでまた、大変なことに・・・