そのほかの短編(Ib『なにこれチャプチェ』追加!!)
□桜桃(サブマス)
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「ほぉ。これはエラいトレーナーさんでんな。」
「どうしたのです?クラウド。」
仕事はきっちりとこなすクラウドが珍しくもモニターを眺めて嘆息をしている様子だったものでついつい気になりました。
つられて私もモニターを眺めればそこには若干服装が簡素でイッシュでは見かけない姿をした女性が楽々とバトルを乗り切っておりました。
そのセンスの素晴らしいことといったら。初めて見るお方ではありましたが・・・只者ではないということぐらいはひしひしと伝わって参ります。
「なるほど・・・恐ろしいほどにお強い方ですね。この方は一体?」
「それがやな、どうも外国からの方らしいですわ。ここに挑戦にくるのも初めてらしいんや。」
「そうなのですか。お名前はなんと言うのですか?」
これほど見惚れるバトルというのもお目にかかったことがないからでしょうか。
私の口は自然とこのバトルを楽しむ女性の名を聞いておりました。
お一人なのに2対のポケモンを出している辺り、ダブルトレインに挑戦中なのでございましょう。クダリが心底羨ましくもあります。
「え〜っと・・・トレーナカードによると『行』はんらしいでんな。まぁ、多分こっちでは『ユキ』と読まれなはるんやろ。」
トレーナーカードを見せてもらえばその名前はカンジで書かれておりました。となると、ニホンの方なのでしょうね。
これまたずいぶんと遠方からの来客だったことに驚かずにはいられません。
「ユキ様ですか。彼女は今何勝目なのですか?」
「20や。この分ならクダリはんがもし本気を出しても互角・・・いやそれ以上にわたりあえるんやないかな?
この子のポケモン、今んとこ完全無傷やし。」
「ほお。それはすごい。是非ともシングルにも来て頂きたいものでござい―――」
ビーーー、ビーーー!!!!!
私の言葉は回転灯が回り始めたと同時にけたたましく鳴り響いたブザーの音によって遮られました。
これは異常事態の音でございます。
「サブウェイマスター、タイヘンダ!!ATOシステムがハッキングされて、ダブルトレインの車両と連絡が取れない!!」
「なんですって!!?」
ほぼ反射的にモニターへと振り返ればあの心躍るバトルの光景は形もなく、ただザーザーと耳障りな音が鳴るばかりでございました。
「クダリに通信機で連絡を!!お客様の脱出が第一にございますゆえ!!」
お客様第一、と言ったのは業務上当然のことなのでございますが今回は少しばかり違う意味もこもっておりました。
今連絡が取れない車両にはユキ様もご乗車されているのです。彼女に何かあっては私と手合わせすることが夢のまた夢へと誘われてしまう。
まことに私情で勝手な意見ではございますが、私にとってそれほど大切な意味も、またなかったのでございます。
「了解!!」
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