そのほかの短編(Ib『なにこれチャプチェ』追加!!)

□君のために(Ibギャリー夢)
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―――俺は恋をした。


思えば出会ったときから好きだったのかもしれない。



絵を描く道に進みたいと思っていた俺を周りが反対する中、唯一応援してくれたのがアイツだった。


―――お前ならできるよ!!絶対!!



―――辛くなったらいつだって頼れよ。俺はそのための存在なんだからさ。



アイツの言葉にどれだけ救われてきたことだろう。



それなのに俺は何一つとして恩を返せない。


優しいアイツは見返りなんて求めてないのかもしれないけど。



それでも一度でいいから、俺のしたことで喜んでもらいたかった。



でもそうやって行動しても結局アイツを困らせるばっかりで。



―――お土産?別に気を使わなくたっていいのに。


―――って、ええ!?こんなにも饅頭ばっかり!俺、食えるかなぁ・・・


―――じゃあさ、半分ずつ食べようぜ。

―――いいんだよ、どうせ俺一人じゃ食べきれないんだから。


・・・笑っていても、本当は困っているのなんてお見通しだった。長い間、一緒にいたから。


好きで、好きで。どうしようもないくらい好きだった。



でもアイツは男。俺も男。つまりは同性愛なのだ。


世間的には異常として差別される。



だからこの想いは伝えられない。



だってこんなこと伝えたってアイツは困るだけだし、たとえ俺の想いを受け入れてくれたってアイツは幸せにはならない。



気づいてほしい。でも気づかないでほしい。


そんな相反する二つの感情が渦巻いて、俺を狂わせる。


俺は壊れてしまう前に絵を学ぶためだと言い訳して海外へ留学した。


・・・アイツには何も言わずに。


でもいつまでも隠せるわけもなくて。留学してから三週間後にアイツからのエアメールが来た。


内容は『俺の知らないうちに留学したんだな、気づけなくてごめん。

お前はどんどんすごくなっていくよなぁ』

なんていうものだった。


謝らなくていいのに。本当はこっちが謝らないといけないのに。



手紙の最後にはこう書かれていた。


―――お前が帰ってくるの、待ってるからな―――



俺が帰ってくるのなんか待ってなんになるのだろう。


・・・期待してしまう。


もしかしたら、アイツも、俺と同じ気持ちなのではないかと。


どう考えたってありえない。



でもそんな淡い期待は捨てられないままで。


だから身を投げるつもりで俺は変わった。



女口調に変えて、服装とかも女と同じくらい気を配るようになった。



・・・俺はアタシに変わった―――




*****



「―――なぁ、ギャリーって好きなやつとかいるのか?」



「ブフッ!!」


アタシの想い人―――セノと久しぶりに再会してお茶をしていたとき、突然そんなことを聞いてきた。


セノはいかんせん鈍感だから、アタシの想いに気がついていない。



でもそれでいい。・・・本当はよかないのかもしれないけど。



「ああ、いきなりすまんな。もし好きな人とかいるんだったら俺なんかのために時間使わすの悪いなって思ってさ。」



『それはアンタよ!!』


































・・・なんて、言える訳もない。
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