貢ぎ物
□ミルクパズル(Ib長編っぽいのの番外編)
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その日、ギャリーの胸は高鳴っていた。
それもそのはず、今日は美術館を脱出して以来の再会を果たす日だったのだ。
あの絶望の中を無事脱出できただけでも奇跡だというのにその上再会となってはもはや形容もできないほどのものがあった。
だからなのか、ギャリーは鏡を真剣に見つめ、まるで乙女のように
髪がはねてないかとか、唇が荒れてないかとか、ニキビができてないかとか。
初デートで緊張する彼女かっ!と突っ込みたくなるほどに。
それだけ、彼にとって再会が嬉しいものであったのだ。故に、緊張する。
結局はその繰り返しなのである。
「・・・よしっ!準備オッケー!!」
そのアンリミにも蹴りをつけたギャリーは、勇みながら玄関へと向かった。
*****
「ふぅ。着いたわ。
・・・あの子達ちゃんと来れるかしら・・・」
ギャリーは辺りを見渡すが誰もいなかった。
本来の約束の時間より1時間も早いのだから当然であるが、それでも誰もいないというのは不安なものである。
ギャリーの場合、それは特にと言ってよい状況であった。
彼が美術館にいたとき、途中でイヴに助けてもらったからいいものの、その前までは一人ぼっちで、しかも死にかけたのだ。
その記憶はトラウマといえるほど恐怖の対象であり、避けるものである。
しかし彼にはただ待つという選択肢以外がないが。
それでも、15分ほど待つと、車の音が聞こえてきた。
いわゆる、黒塗りの高級車というやつである。太陽の光で黒光りするそれは、明らかに乗っている人も普通ではないと決定付けていた。
車はギャリーの前でぴたりと止まり、後部座席が開く。その中から出てきたのは茶のロングヘアーに緋の瞳が特徴的な少女であった。
そしてギャリーは、この少女を知っているのである。
「イヴ!!」
「ギャリー!!」
イヴ、と呼ばれた少女は飛びつくようにしてギャリーに抱きついた。ギャリーもその華奢な体を抱きしめる。
「久しぶりね!!元気にしてた!!?」
「うん!!ギャリーも元気そうで嬉しい!!」
二人は最高の笑顔で再会を喜び合う。
それをよく思っていないのがまた一人、ギャリーを威嚇するようにしてイヴを引き剥がした。
「イヴに触らないでよ!!」
声を張り上げたのは金髪に蒼い瞳と絵に描いたような美人の、これまた少女である。
「メアリー・・・」
ギャリーはキョトンとその名を呼んだ。
が、それも一瞬のことである。
「会えて嬉しいわ・・・メアリー!!」
「ちょ・・・ギャ・・・」
綻んで笑うギャリーを見て本当は嬉しいメアリー。
彼らは今、陽だまりの中にいるような温かさを味わっていたのだ。