オリジナルBl小説
□I love the voice
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A
あれから、一週間が過ぎた。
俺は、相変わらずの職場で相変わらず……
なんでお前がここにいる(怒)。
「真嶋って、タブレット持ってんのね、スマホと使い分けてんだ。ゲームとかすんの?」
「ああ?しねぇよ。映画はたまにみるけどな。」
「なんで?ゲーム楽しいわよ。ぜったいハマると思うなぁ。」
お前と一緒にすんな。
「ね、買っちゃいました!うふっ。」
うふってなんだ?不気味な笑みを浮かべた香坂がビデオショップのビニール袋を俺の目の前でブラブラと……
「なんだよ、コレは!」
「よくぞ聞いてくれましたぁ。」
聞いてないわぃ。
邪魔だという意思表示に決まっとろうが!この馬鹿女が。
口に出さないのは、怖いからじゃないぞ。サワラヌカミニタタリナシって……結局怖いんじゃねぇか……
「新作ゲームよ。これ、ドラマCD付きなのよね、聞きたい?」
「んな訳ナイダ……」
しかし、この手の女は何故、人の話を聞かね〜んだ?
てか、話す気もないのを察しろよ〜
そして香坂は周りも気にせずにビニール袋の中を物色。
「おま、こんな所で出すなよ!」
恥ずかしいダロ、仕事場でこんなことやってんの誰かに見られたら!
「仕事、終わってんじゃない。アフターファイブは自由だわよ。」
こいつ、イライラする。
「場所くらい考えろよ。」
「ならお茶くらい付き合ってよ。今日は奢ってあげるわよ。」
俺より太いんじゃないかという二の腕の香坂にぐいぐい引っ張られた。
「ほら、行くよ〜」
( ^-^)/(T-T )何故……
そして、今に至る。
なんで……ここなんだ……確かにコーヒーは美味い。
願わくばマスターがこっちを見ませんように……
しかし、願いは叶わないのが世の常。
カウンターの方を、チラッと見てしまった俺の視線を感じたのか……
マスターとバッチリ目が合った。
軽く会釈をされ、ギクシャクしながら片手をあげた(泣)
こんなことなら、職場の方がまだましだった……目の前の馬鹿女が勝手にやったことなんだと、言い訳できる。
ここじゃ……
「ほら、どこ見てんのよ、聞いてみて?免疫無い真嶋にはちょっと凄いかなぁ。あ、ちょっとタブレット貸してね。」
無理やり耳にイヤホン突っ込まれる情けない男になり果てていた。
「ちょっ、何す……」
『なんだぁ?……もう、こんなに起たせて……』
『あぁん……ひゃ〜ん』
「 (?_?; 」
バッとイヤホンを抜き取った。
「あ、乱暴にしないでよ真嶋!イヤホン壊れたらどうすんの。」
「な、な、なんだよコレ……」
エロい低音ボイスに、喘ぎ声も……男同士じゃないかぁ〜
「腰にきた?新作BLCDよ。」
ガタッと椅子が鳴った。
「俺、帰るわ。用事思い出した。」
「え〜?真嶋?」
千円札をズボンのポケットから取り出しテーブルに置き、大股で歩いてカフェバーを後にした。
最悪……もう、ここにこれねぇじゃん。せっかくマスターと友達になれそうだったのに……
BLCDだと?なんで女がそんなの聞くんだよ……
『なんだぁ?もう、こんなに……』
「うわっ!」エロボイスが聴覚に残ってる?
ちょっと頭冷やして帰ろ。
目の前の公園に入って行き空いているベンチに腰を掛けたとたん、着信音が鳴った。
画面を見てウンザリする。
「はい……」
でなきゃいいのに、どうせ履歴に残るからと、出てしまう。
「あ、真嶋?用事済んだ?」
「まだだけど。」
さっき出たとこだろ〜が!
「あのねぇ、タブレット忘れてるよ。」
「は?」
どさくさに紛れて奪われていたのを思い出した。
「明日土曜日だし休みでしょ、私が持ってんのもどうかと思ってさ、置いて来ちゃった。」
「何?」
今なんと言った?
「バイトのお兄さんに渡したら快く預かってくれたから、明日にでもあのカフェまで取りに行ってよね。聞いてる?……あれ?切れちゃった。せっかくゲームアプリ入れといてあげたのに……ま、見たら分かるか。」
鍵かけとくべきだった……
信じられん女だ、あいつは!
来た道を戻りながら厄除けの御守り買おうかと思う。
「は〜」
溜め息をついていた。入りにくい……なんだかマスターの顔見れないし。と、思っていたら……
「真嶋君、早かったね。」
「ぅわっ?!」
マスターにポンと肩を叩かれていた。