SZ
今日は春島に近づいているからか、比較的過ごしやすい。
ぽかぽかと穏やかな日差しが注がれていた。
が、穏やかな天候とは正反対の真っ黒な渦が心に渦巻いている男がいた。
「さっんじく〜ん」
まただ、最近呼ぶ回数が増えたんじゃないか?
こんな小さな事にまで嫉妬する自分がウザイ。
「ムファ〜い!!何でしょー!ナミすわん!」
キッチンにいたはずのサンジは、ナミが呼ぶとどこから聞いたのかすぐ来る。
それもそれでムカつくわけで、
「いい子ね〜」とナミは跪くサンジの頭をよしよしとする。
「んぬわぁっミさん!」とまるで尻尾をぱたぱた振っているようなサンジは、まったく年上には見えない。
「あ、そうそう。ちょっとお願いがあるんだけど…」
「何でしょう?ナミさん。仰せのままに」
今度はスクッと立ち上がって、執事のように優雅に頭を下げる。
「アイツの機嫌を直してやって?」
「んもー、たまったもんじゃないわよ」とか言って俺をはらう。
…シッシッ、って…俺ァ虫かァ!!?
「…あと、ゾロ。私がサンジくん呼んだのはこれよ、こ・れ!」
「まったく」とため息混じりに俺に向かって突き出したのはカクテルグラス。
中には鮮やかな色が混ざり合った綺麗なグラデーションのカクテルが入っている。
「これがまた美味しいのよね!」
ニコッと笑ってグラスを傾けるナミ。
俺には…作ってくれないのに…。
また黒い渦が蠢いているのを感じる。
すると、カクテルを味わっていたナミがまた目線を合わせてきて
「あんたが頼まないからよ」
…まあ、確かにな。
あんま洒落た飲み物を好まない俺としては、そこらへんの度数の高い酒を飲んでいるほうが良い。
俺がムスッとしていると、それまで黙って俺たちの話を聞いていたコックが急にニヤッと笑った。
「なんだ、マリモヘッド。作って欲しかったのか?」
まるで馬鹿にしたような口振りで言われて、モヤモヤとしていた自分がバカのように思えてきた。
「う、アホかァ!!どぅわれがそんなもん!!!」
フンッと踵を返す。
「…ナミさん、」
「行ってきなさいよ、ただし、静かにね」
ふぅー、と聡明な彼女はため息を吐く。
サンジは苦笑しながらも「失礼します」と律義に挨拶をしてから急いでゾロの消えていった後部の方に走っていった。
「まぁーったく、世話が焼けるわぁ…」
やれやれ、と首を振る。夜だけではなく、昼間っからもイチャついているバカップルは他人を巻き込む。
「…ホント、いい迷惑…」
あわやナミはBGMに甘い声を聞きながら鮮やかなカクテルを傾けるのだった。
fin.
あとがき、
なんやかんやで助けてくれるナミさん。
そのお礼にサンジくんはカクテルを作っているんです。
でもそれ見てまたゾロは嫉妬するんですよね〜。
で、ナミさんに迷惑かける→ナミさん助け船を出す→イチャつく→お礼→嫉妬…
ナミさんごべーん!!
でもナミさん以外と楽しんでます(笑)←
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