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□雪が積もったら。
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オールキャラ+甘いジノバキ
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雪が
積もったら。
「うわぁー!真っ白!」
「さっみぃー!」
「こりゃ今日は練習どころじゃねぇなぁ。」
「雪上サッカーってのも面白そうじゃね?」
「バーカ。ボール埋まるっつの。」
「でっかいカマクラ作りましょうよー!」
「いてっ!誰だ雪玉ぶつけたヤツ!」
相変わらず予算のない我がETUの真冬の合宿は、今年も温暖な南国ではなく、寒波の襲う都内某所で行われていた。
前日の夜からちらついていた雪は真夜中には本格的に降り出し、今朝の一面の銀世界を作り上げたのだ。
普段とは違う景色に、メンバー達のテンションも上がる。
北国出身の者もいるものの、東京でここまでの積雪は珍しい。
無邪気にキャッキャとはしゃぐ姿は、まるで小学生の遠足だ。
「ま、今日はオフにするかぁ。中で筋トレとかしたい奴はご自由にー。」
ユルい監督の許可も下りた所で、大雪合戦が始まった。
「おまえ達くれぐれも怪我するなよー!」
松原コーチの声はハイテンションな選手達には届いていない。
監督を始め雪合戦に参加しない大人達は、暖かい室内から真っ白のピッチを眺める事にした。
「ははっ。みんなじゃれ合ってる犬みたいだねー。」
言うまでもなく見学組のジーノは、優雅にコーヒーカップを片手に笑っている。
そこへ誰よりも犬らしく瞳を輝かせながら駆け寄るのは椿だ。
「王子っ!雪すごいっすよ!」
「うん、すごいね。せっかくだから遊んでおいで。」
「王子は行かないんすか?」
「ボクは寒いの苦手だからね。ここで見てるよ。」
「そうっスか・・・。」
予想通りの返事だったが、しゅんと肩を落とす椿。
ジーノはそんな愛犬の頭を撫でながら、優しく話しかける。
「ほら、雪合戦が始まっちゃうよ。見ていてあげるから、行っておいで。」
「ウッス!行ってきます!」
子供のように駆け出した椿を、ジーノが呼び止めた。
「あ、ちょっと待って、バッキー。これ貸してあげる。」
ふわりと巻かれた上等のマフラーは暖かくて、香水が香った。
「風邪引いちゃ大変だからね。」
にこっと微笑むジーノに頭を下げて、椿はみんなの所へ駆けて行った。
黒田「よっしゃ、バリケード作ろうぜ!」
杉江「じゃあバリケード係と雪玉係に分かれよう。」
椿「な、ナツさんその雪玉やばいっす!デカすぎますって!」
夏木「はっはっはー!食らえっ!」
丹波「おいおい、そりゃ反則だろ。よーし!みんな、やっちまえ!」
夏木「えっ、ちょ・・・タンさん同じチームじゃ・・・ぎゃああああ!」
堺「自業自得だろ。」
世良「ですよね・・・って、でっかいカマクラー!二人ともいつの間に作ったんスか!」
堀田「子供の頃よく作ったよ。意外と中は暖かいんだぜ。」
黒田「ちょっとバリケードどうなったんスか!」
堺「おいおい、陰キャプテンがお怒りだぞ。」
黒田「ちょ!それやめてくださいって!」
清川「あれ?そう言えば本当のキャプテンは?」
世良「コシさんが雪遊びなんかするわけないっスよ。きっとトレーニングルームで自主練し・・・って、雪だるま上手ーっ!」
村越「・・・まぁ俺も子供の頃よく作ったもんだよ。」
清川(コシさんの子供の頃・・・想像できねぇぇぇ!)
丹波「ぎゃはっ!この雪ダルマ、松原コーチに似てるー!」
石神「本当だ。なんかヒゲになる物ないかなぁ?」
堀田「確かフェンスの脇に草が生えてなかったか?」
丹波「よし、赤崎!椿!掘ってこい!」
椿「ええっ!俺っスか!?」
丹波「犬と言えばここ掘れワンワンだろー?」
赤崎「誰が犬っスか。タンさんが言い出したんだから、自分で取ってきてくださいよ。」
そんなこんなで、結局雪合戦の勝敗はどこへやらだが、雪を十分に満喫したメンバー達であった。
「やぁ、バッキー。雪合戦は楽しかったかい?」
「はい!」
椿は息を弾ませながら、ぬくぬくと本を読んでいたジーノの所へ帰ってきた。
しかし、突然悲しそうに眉尻を下げたので、まさか怪我でもしたのかと心配になる。
「スミマセン・・・マフラー、雪で濡れちゃって・・・。ちゃんとクリーニング出してから返します!」
「何だ、そんな事か。いいよ別に。安物だしさ。」
「いえ、このままでは返せないっス!」
「ふふ。律儀な子だねぇ。」
「あと・・・お礼っていうか、お土産っス。」
椿がおずおずと差し出したのは、手のひらサイズの小さな雪だるま。
いびつな雪玉を重ねて、丸い石の目を付けただけの素朴なスノーマンだ。
「小さくて可愛いね。」
子供っぽくて呆れられるかと心配した椿だが、ジーノは優しく笑ってくれた。
「せっかく積もったのに、王子はきっと雪を触る事もしないのかなって、思ったから・・・。」
「ありがとう、バッキー。ほら、見て。もっと可愛くなったよ。」
誰かの差し入れだった小さなハート型のチョコレートを頭に乗せてもらって、雪だるまは少し嬉しそうに見えた。
なんて言ったら、それこそ夢見がちだと呆れられそうなので、口には出さなかったけれど。
「でもこんな小さい雪だるま、すぐ溶けちゃいますね・・・。」
寂しそうにぽつりと呟いた椿に、王子様はとろけそうな優しい微笑みを浮かべた。
「うん。でも、だからこそ雪ってキレイなんじゃないかな。」
「・・・?」
「冷凍庫に入れておけばこのままでいられるかもしれないけど、それじゃ風情がないよ。」
ジーノの言葉の意味を少し考えてから、椿は納得したような顔をする。
「そっか・・・。そうですよね。花火とかと同じっスね。」
「そうだね。夏になったら一緒に花火、見ようね。」
クスッと笑いながらジーノは椿の髪を撫でた。
(永遠ではないからこそ、こうしてキミに触れられる瞬間が愛しいよ。)
そんなジーノの意図を知ってか知らずか、椿は「花火楽しみっスね」と、無邪気に笑った。
翌日には雪も溶け、合宿メニューが再開される事となった。
しかし、達海監督はメンバーを見渡して、一人足りない事に気付いた。
「あれ?夏木はどうした?」
「昨日はしゃぎ過ぎて、風邪引いたとの事で・・・。」
非常に情けなそうに答えた松原コーチの言葉を近くで聞いていたジーノが呑気に笑う。
「はははっ。ナントカは風邪引かないって、迷信だったんだねぇ。」
「全くだ。」
頷くしかない監督とコーチであった。
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みんなが雪遊びしてたら可愛いな〜っていう妄想トークから書きました♪
そしてまたもやナッツで落としましたwごめんw