舞台-theatrical-

□甘いお菓子はいかが?
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やっぱりコイツを呼んで正解だった。
置いてある場所も何でも知ってるし、手際もいい。
軽い上新粉から舞い上がった煙で真っ白になりながらそう思った。
隊服が黒いから余計に目立つ。

「ケヘッケヘッ、うへー煙てェ…」
「あー、やっちゃいましたね…」

すぐに混ぜれば大丈夫だと言われ、さっき作った砂糖水をぶっかける。
そのままよく捏ねればいいらしいけど、なんだか粘土みたいな匂いがして急に気持ち悪くなった。
よっぽど嫌そうな顔だったのだろう。
察した山崎がマスクを渡してくれた。
たりないからと足した水で手をベチャベチャにしながら、捏ねてちぎって丸めて茹でる。

「いいですか、浮いてきたらですからね。じゃないとパッサパサのカッチカチ団子になりますよ」

なんて山崎の忠告をいつも以上によく聞くのは、少しでも美味しいモノを渡したいから。
我ながらなかなかよく出来た団子ができあがった。

残るはみたらし。
小なべに水75mlを入れ、砂糖・醤油・片栗粉を加える。
へらでかき混ぜながらとろみが出るのを待つ。

「じゃあ沖田さん、俺はこれで失礼しますね」
「え、なんで?」
「もう完成ですし、それに…」

チラリと入り口に目を走らせる山崎。
視線を追うと土方さんが。
すれ違う瞬間に一言囁く山崎、小さく頷く土方さん。
いつの間にかグツグツと大きな泡を出していたみたらしに目を落とした。
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