舞台-theatrical-
□月影ニ浮カブ虚像ノ恋唄
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部屋の中には布団。
布団の上には愛しい子供。
起こさないようにそっと近づきしゃがみこむ。
天使のような可愛い寝顔に思わず口元がゆるむ。
横を向いて眠っている彼の耳にふっと息を吹きかけた。
ピクンッっと肩が跳ね、寝返りをうって仰向けになる。
うっすらと開く瞳。
開けても見えないことは知っている。
「ん…土方さん…?」
くすぐったくて思わず身じろぎしてしまい、仕方なく目を開ける。
よく見えない。
でも違う。
大好きなあの人の匂いじゃない。
「ちょっとココで土方とかなくない?萎えるわー」
あれあれ?
これは組の奴でもない。
「だんなぁ…?」
っ!!
いってーな、オイ
マジかよ指切っちまったよ。
いくら涼しいからってまだ夏だろ?
どんだけ乾燥してんだよ俺の指。
「…なんか嫌な予感」
血の滲んだ指を軽く咥えて呟いた。