舞台-theatrical-
□桜の花
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「春っていいですよね」
「あ?つねに頭ン中春みたいな奴が何言ってんだよ」
「ひっでー。俺は常に土方さんを亡き者にすることを考えてるんで、頭の中は殺伐としてますぜ?」
「当たり前みてたいに言うんじゃねぇよ」
お?
いつもなら俺の言葉で土方さんの刀が飛んできてもおかしくないのに。
不思議に思って土方さんの顔を覗き込むと、予想もできなかった笑顔。
普段は眉間にしわをよせて不機嫌そうな顔をしているのに、なんで?
「…」
あまりに穏やかな顔で土方さんがほほ笑むものだから、俺はどうリアクションをとっていいのか分からない。
土方さんは何も言わないオレの頭に手を置き、再びやさしくなでながら微笑む。
どうしちゃったんでィ…この人。
「春…なんだよな…」
ぽつりと小さな声で呟かれた言葉。
この人が何を考えてるかなんてわからないけど、きっと俺には理解できないことを考えているのだろう。
それは、分かる。
でもなんとなくさみしそうな雰囲気が伝わってきたので、思わず土方さんの服の袖をぎゅっとつかむ。
「ええ、春ですぜ」