舞台-theatrical-
□甘えてごらんよ
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「ったく、あのバカ…」
両手をポケットに突っ込み、不機嫌まるだしで歩く俺。
山崎が「沖田さん体調よくなさそうだったので今日はお休みにしてあげてください」なんて言ってきたのは数秒前。
「なんだよ大丈夫って。ホントに体調悪いんじゃねえかバーカ」
部屋の前に立ち障子に手を掛ける。
「総悟、入るぞ」
思った通り返事はなく、言い終わらないうちに身体を中へ滑り込ませ後ろ手に閉める。
無造作に敷かれた布団の上には小さく縮こまるようにして眠る総悟。
山崎と別れてから10分も経っていないはずだから、随分はやく寝付いたらしい。
呼吸に合わせて不規則に上下する布団の山が、眠りが浅いことを伝えてくる。
俺は枕元に座り込み、うっすらと滲んだ汗で張り付いた前髪を梳いてやった。
「ん…」
ピクリと反応する総悟。
「あ、悪ィ…起こしちまったか?」
返事はない。
まだ眠っているようだ。
「そうだよな。お前一回寝たらぜーんぜん起きねえもんな」
隣で爆発が起きてもスヤスヤと気持ち良さそうに寝息をたてているような奴だ。
何したって起きっこない。
俺はその雪のような白い頬に、小さく小さく口付けた。